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出会いは秋でした 9
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ミカは仕事で自分を忙殺することを選んだ。
そうすればアルを忘れられる。
いや、忘れられはしない。
ただ、アルのいない部屋にいる時間が少なくなる。
アルのことを考えずにいられる時間が増やせる。
仕事をしているか眠っているか。
ミカの日々はそれしかなくなった。
「社長、外線です」
秘書のジルが告げた名は、聞いたこともない土地の名前の警察署だった。
「おつなぎしますか? 警察署ですと私は用件を聞かないほうが良いかと思って何も伺ってはいないのですが」
「いいよ。聞いておいて」
「かしこまりました」
受話器を置いたミカは読みかけていた書類に目を落とした。
しかし、すぐに再び机の上の電話が鳴った。
「社長、申し訳ないのですが…」
困ったような声でジルが告げる内容は、確かにミカでなければ理解できるはずがなかった。
「そのような秘書はいないと申し上げたのですが…」
電話の向こうでジルは取り次ぐのを断ろうとしている様子だ。
「いや、つないで」
「え? よろしいのですか?」
「うん。急いで」
ミカは震える指ではやる胸を押さえた。
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