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Vierge 2
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レポートを提出して外を歩いてるとミカから電話がかかってきた。
「アル、着いたよ。今どこ?」
「どこの駐車場? 行くよ」
「ねぇ、アル、ここまで来たら、なんか懐かしくなっちゃった。ランチ、学食に行かない?」
確かにランチする約束はしてたけど、学食!?
いや、別に、ミカと一緒ならどこでもいいけど、でもさ…。
デートみたいって浮かれてた俺の気分は急降下だよ。
「アル?」
「あ、えーと、うん、いいよ。学食の場所、わかる?」
「わかんない」
ミカの笑い声が耳元で聞こえる。
スピーカー越しでも色っぽいよな、ミカのこういう、ふふっていう笑い声。
「でも、アルのケータイ追跡するから大丈夫。学食に向かってて。ゆっくりね」
「は~い」
いったん、電話を切ってケータイをしまう。
うん、今でも俺のケータイにはGPSがついてて、ミカはスマホで俺の位置を特定できる。
嫌だと思ったことは一度もない。
でも、監視されてるみたいと批判されたり、あからさまに『おかしいよ、それ』と言われたことが何回かある。
だから、あまり人には言わないようになった。
こういう感覚のズレが俺と周りの人との間にはある。
そして、こういうことを通じて俺は‘普通’とか‘一般的’を知る。
ミカと2人だけの生活では知り得ない情報だ。
ミカが学べと言ったことには、こういうのも含まれてるんだろうな。
言われた通り、のんびり歩いてると声をかけられた。
同じ講義を取ることが多くて仲良くなったリュリュとゾエ、リュカ、テッサ、ニノンだ。
「私達これからランチなの。アルもどう?」
ゾエは去年のクリスマス休暇直前に俺に告白してきた、ひとつ年上の女性だ。
指輪のことは知ってて、なお好きだと言うのは勇気のいることだとミカは教えてくれた。
俺は全然気付きもしなかった。
もちろん断ったけど、こういう状況での告白って初めてで、どうしていいか分からなかった。
うまい断り方も分からなかったし、断った後どうすればいいかも分からなかった。
ホント、‘いい体験’だ。
ゾエはその後も友人として接してくれてる。
だから俺もそうしてる。
これが正解かどうかは分からない。
人間は千差万別。
俺には学ばなければならないことが多すぎる。
「あ-、えーと、俺、学食で待ち合わせてて」
「私達も学食行くの」
「嫌じゃなければ一緒しない?」
ミカはなんて言うだろう。
迷ってたら後ろから俺を呼ぶ声がした。
ミカだ。
リュリュに「待ち合わせの人?」と聞かれて頷く。
「アルのお友達?」
ミカにそう聞かれてぎこちなく頷くと、ミカは営業用スマイルで皆に挨拶した。
「こんにちは。初めまして。ミカと言います」
そして優雅に握手する。
え~、いいのか~、なんだ、心配して損した~。
だってミカは内緒というか、秘密にしておきたいのかと思ったから。
まぁ、でも、むやみに隠すと逆に怪しまれるって言ってたし、いいのかな…。
それから雑談しながら学食へ向かってるんだけど、ミカは女子に囲まれて俺の斜め前を歩いてる。
うー、俺とのデートォォォォ!
そんな俺の視線に気づいたのか、ミカがちらっと振り返った。
そっと笑って一瞬だけ手を触れ合わせる。
誰も気付かないほどのさりげなさで。
それだけで俺は顔が熱くなってしまった。
やばい。
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