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混交雑 9
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ミカはアルの肩を押した。
バランスを崩して尻餅をつくアル。
そのアルに覆い被さるようにしてミカは熱いキスをした。
長いキスの途中でアルの両手はミカの背に回り、支えを失った上半身が後ろに倒れると、ミカも引っ張られて彼の上に倒れこんだ。
「もっとアルを味わわせて」
耳にキスするとアルが抗う。
「早く」
「だめ」
「やだ」
早く繋がって早く気持ち良くなって早く絶頂を迎えて早く不安をごまかしたい。
それを分かっていてミカは性急な欲求に応えない。
体は満たされるだろう。
しかし、それでは心は満たされない。
ごまかしただけの不安は隠れるだけで小さくなりはしない。
払拭できなくとも小さくすることはできるのだから、そんな一時凌ぎは許さない。
ミカは姑息的手段に訴えるのではなく、時間をかけて体と一緒に心も溶かしてしまいたいと思った。
すぐに尽きるような満足ではなく、深い満足を、体だけでなく心まで抱かれる安心感をアルに与えたい。
「アル、体だけ繋げるのがセックスじゃないよ」
丁寧に、丹念にアルの肌の上に指を、唇を、舌を滑らせ、一点集中の快感を望んだアルにミカは意識の内側から溶けていく快感を覚えさせようとした。
焦れたアルはいつもより敏感で、小さな刺激にも反応する。
体温も呼吸も上がったアルの肌はしっとり汗ばみ上気している。
「きれいだよ、アル」
体中にキスをしているのに肝心なところには一切触れない。
アルは抗議するようにもぞもぞと足を動かし、苦痛とも言えるほどのかすかな快感に心拍を上げていく。
「ミカ、もう…」
「まだ」
「もっと」
「だめ」
快感は蓄積されていく。
いつもならそれは加速度的だ。
なのに今夜はいつまでたっても初速のまま。
確実に蓄積はされていっている。
だから体は知った快感を求める。
その先に何があるのか分かっているから、それが欲しいと体中が叫んでいる。
なのに、いつまでたってもそこに到達しない。
ぬるま湯で茹でられているようなものだ。
早く沸点に達したい。
なのに火力が足りない。
もっと熱く、もっと大きく、もっと強く。
「ミカ、ミカ、ミカ」
うわ言のようにアルが恋人の名を呼ぶ。
ミカなら連れて行ってくれる。沸騰させてくれる。
だからミカが欲しい。
名を呼ぶアルにミカはキスで答えた。
唇が触れ合うだけの短いキス。
それだけでアルの目尻から涙がこぼれた。
「…アル…?」
アルが小さく震えている。
時折痙攣するように体を縮こまらせるが、細かな震えは続いている。
「どうしたの? アル、大丈夫?」
今まで見たことのない反応にミカは心配になってアルの顔を覗き込んだ。
「…ミカ…」
ゆるゆると両手でミカの肩をつかむが、その力は弱く、指も震えていた。
「何…これ…」
潤みきったアルの瞳も戸惑いを浮かべていた。
安心させようとミカが頭を撫でる。
「ん!」
が、それだけでアルは体を震わせた。
「…もしかして、イった?」
イった? いや、射精感は無かった。多分、射精もしていない。
なのに体中が敏感になりすぎて、触れられるだけで快感が痛いほど。
「直接刺激しないでもイける場合があるらしいけど、実際見たのは初めてかも」
「んぁっ! ダメ…!」
ミカの身じろぎひとつでも肌のいたるところがチリチリする。
「すごいね。気持ちいい?」
はぁはぁと呼吸を繰り返し、じわりと涙をにじませながら、アルは困った顔で答えた。
「気持ち良すぎて死にそう。辛いくらい。頭おかしくなる」
ずっとイきっぱなしというわけではないが、いつまでも余韻が去らない。
体が触れてるだけでも辛そうだと判断し、ミカはアルの上から退くと彼に毛布をそっと掛けた。
「眠れる?」
「わかんない。…怖いよ」
「手、つないでていい? それもダメかな?」
アルがミカの手を探して腕を動かす。
毛布とこすれるだけでも声が漏れるが、先程よりは落ち着いたようだ。
「大丈夫…と思う」
アルはミカと手を合わせた。
それをミカがそっと握る。
「変だったらすぐ言うんだよ?」
「うん」
ミカは心配でアルの様子をうかがっていたが、呼吸はやがて落ち着き、その内、静かな寝息になった。
「おやすみ」
ほっとして、ミカも目を閉じた。
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