アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
arbre généalogique ~mére~ 9
-
キュヨスティ達は牛の世話で忙しく、家にはヘリュとミカとアルしかいなかった。
アルは手伝いを申し出たが断られた。
ヘリュと過ごしてほしい。それが彼等の願いだった。
ミカの持ってきた写真の隅に映り込んだ机をヘリュが目ざとく見つけた。
「この机、まだ持っていてくれたの?」
「はい。父から譲られて今も使っています」
ヘリュは写真の机を指でなぞり、ミカはその様子を不思議そうに見ていた。
「これはね、私が使っていたものなの」
「…そうだったんですね…。父のものにしては趣味が違うなとは思っていましたが―」
「シルヴァンはあなたに何も言わなかったの?」
「ええ」
ヘリュは懐かしそうに写真を見ると、もう一度指でなぞった。
「この机、鈴蘭が彫ってあるでしょ? フィンランドの花なのよ。アンティークショップで見つけてね、シルヴァンが買ってくれたの。あなたが大きくなったら譲りたいと思っていたから…、嬉しいわ」
ヘリュは写真からミカに目を移した。
「ウィリアムズという姓はウェールズのものでしょ? だから、フィンランドの流れも汲む者なんだって赤ちゃんに残したくて、あなたの名前をミカにしたの。フランス名でなくてフィンランド名にしたのはそういう理由。あなたに色々フィンランドのこと伝えたかったけど、何もできなかったわ。だから、この机、あなたが使っててくれて嬉しい。ありがとう、ミカ」
にっこり笑うヘリュに、どう返して良いか分からずミカが曖昧な笑顔をする。
アルはそれを見て、「仮社員証の話、ヘリュにしてもいい?」と聞いた。
ミカは優しく頷くと、表情でアルを促した。
アルはこの机のお陰で自分はここにいられるのかもしれない、と言った。
ミカが自分を拾ってくれて、この机で社員証を書いて持たせてくれたからミカの元に戻れた、と。
ヘリュに礼を述べると、アルはミカにも「あの時は本当にありがとう」と礼をした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
182 / 213