アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
⑥
-
佐伯さんは、何とも申し訳無さそうな表情をした。
俺は別に、そういう顔をさせたい訳じゃ無いのに。
どうしてこうも上手くいかないのだろう。
俺は怒ってもいないし、佐伯さんを許すとか許さないとか、そんなことは考えていない。
それなのに、佐伯さんは何でも気負い過ぎなのだ。
「…一ノ瀬くんは、もし俺が、一ノ瀬くんのことが怖いって言ったら……俺のこと、嫌いになりますか?呆れますか?」
(どうしてそうなる……)
昨日家を飛び出してから、佐伯さんに何があったのだろう。何を考えているのかが分からない。
ただ、少なくとも、そんなことで俺が佐伯さんを嫌いになる訳が無かった。
「そう言われたら、佐伯さんが俺のことを受け入れてくれるまで努力します」
「……嫌になりませんか……?」
それは、すごく不安げな声だった。
今にも泣き出してしまいそうな。
俺はこんなに佐伯さんのことが好きだと伝えているはずなのに、どうして佐伯さんはここまで不安がるのだろうか。
少し拒絶されたくらいじゃあ、俺は佐伯さんを諦め切れない。
俺は、俺が思っている以上に、佐伯さんのことが好きみたいだし。
「佐伯さんが俺のことを好きだって言ってくれる可能性が僅かでもあるなら、それくらいは何とも無いです」
「じゃあ、ずっと俺のことを好きでいてくれますか……」
「はい、何があっても」
………何があっても。
そうは言うけれど、さすがに俺も人間だ。
面と向かって嫌いなどと言われたら、目の前から佐伯さんが遠ざかって行ったら、それは当然辛いかもしれない。
ただやっぱり、そんなことで佐伯さんへの感情が無くなるのかと言えば、そうでは無いのだろう。
だって俺は、一生佐伯さんを守っていける覚悟が出来ている。それなのに佐伯さんを手放すなんて、出来なかった。
男性に怯えてばかりの佐伯さんでは、いつかは壊れてしまいそうで怖い。
本当は、まだ神代のことだって警戒している。
そういう奴等から佐伯さんを守るのは、他の誰でもない、俺なんだ。
俺が、守ってやりたい。
そう思ったから。
「…一ノ瀬くん、ありがとう…ございます……」
(あ、笑った)
佐伯さんは、やっとこっちを向いて、笑顔を見せてくれた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
116 / 331