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④
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しばらく一ノ瀬くんにしがみついていると、微弱ながらも少し速めの鼓動が聞こえて来る。
別に疲れている訳じゃ無いから、一ノ瀬くんも緊張しているんだって分かる。
決して一ノ瀬くんが手慣れているとか、そういう事じゃない。それだけで、何となく安堵したような気持ちになった。
「……一ノ瀬くん…」
俺は、未だに一ノ瀬くんから腕を離せないままで名前を呼ぶ。
「なんですか」
耳元で返される返事がくすぐったかった。
俺はビクリとするのを抑え、1つ息を飲み込んでから、僅かに震える声を出す。
「…動いても、いいです……」
俺は、ちゃんと覚悟して言ったのに、一ノ瀬くんはまた心配して気遣ってくれて。
「本当に、大丈夫ですか」
なんて俺を焦らす。
変に間を置かれるのも嫌で、俺はすぐに頭を振った。
その時一ノ瀬くんは、もう何度目か分からないけど、ふわりと俺の頭を撫でる。
「……じゃあ、動きますね」
そう前置きして、一ノ瀬くんの腰がゆるゆると動き始めた。最初だからか、その動きはすごくスローペースだ。
「…っ…ふ、ぁ……ッ」
それが逆に辛くて。
出ては入ってを繰り返していることが、すごく直接的に感じられた。
俺はまた少しだけ怖くなって、一ノ瀬くんを更に強く抱き寄せる。怖いとは、口に出さないようにした。
「…大丈夫ですか」
そんなことを聞かれたって、俺には答える余裕が無くて言葉になるような返事は返せない。
「んっ……はぁ、あ…っ」
一ノ瀬くんを傷付けないように。
そう思うけど、自然に手に力が入ってしまった。
俺は言葉の代わりに、一ノ瀬くんに伝わるまで何度も頷く。
(全然、痛くない……)
それは、とても大事にされてると分かるくらいに。
吐息から、仕草から、その動きから、一ノ瀬くんの気遣いが伝わってくる。
「…っ、一ノ瀬くん……」
こんなに幸せな気持ちになって身体を重ねたことなんて、今までに無い。
一ノ瀬くんからの好きが溢れて溢れて、痛いくらいに心が満たされた。俺は、一ノ瀬くんに大切にされてるんだと、改めて思える。
すると一ノ瀬くんは、俺の頭を撫で始めた。
「佐伯さん……声、抑えなくてもいいですよ」
「はっ……?そんなの、やだっ…」
一ノ瀬くんが変なことを言うから、俺は余計自分の声に意識をしてしまい、顔を一ノ瀬くんの肩に押し付けた。
だって、男のこんな声を聞いたって気持ち悪いだけだろう。
「…佐伯さん、可愛いですよ。だから、声が聞きたいです」
本音、なのだろうか。それとも、俺の声が聞きたいだけの嘘なのだろうか。
そんなことを思うけど、どっちにしたって声は極力出したくなかった。
「可愛くなんか、ないっ…」
俺がそう言っても、一ノ瀬くんは折れないんだろうな。
だけど。
「……逃げないで」
とか、逃げそうになる腰を追いかけられたら、まともに声なんて抑えられるはずが無かった。
「ぅあ…っ、無理、ぃ……っ」
はしたなく零れた俺の声は、ワイシャツの向こうに消えていった。
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