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好きだったけど①
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あの一度のキスから、何分が経っただろう。
始めは触れるだけの口付けだったのに、今ではすごくキスは深くなって。
俺はベッドの上で必死に一ノ瀬くんにしがみつく。
頭が麻痺して、クラクラして、自然と一ノ瀬くんの背中に回した手に力が入る。
「はぁ…っ、ぅ……ん…」
気が付けばもう唇はヒリヒリしていて、それだけ長くキスを繰り返していたのだと実感する。
でも、それとは裏腹に、それは一ノ瀬くんの愛情を示す行為だから、俺はすごく嬉しくて幸せだった。
「…一、ノ瀬くっ……」
「かわい……」
俺に、一ノ瀬くんの声は届いていなくて。
一ノ瀬くんのキスに付いて行くことで精一杯だった。
息継ぎもろくに出来なくて、苦しくなる。
「一ノ瀬く…、待っ……て…っ」
俺はやっとの思いで一ノ瀬くんの胸を押し返した。
意識は朦朧として、俺は肩で荒く呼吸をする。
「…すみません。大丈夫ですか」
「大丈夫じゃ、ありませんっ…」
俺は一ノ瀬くんと違ってキスなんかてんで苦手で、それなのに一ノ瀬くんは可笑しそうに笑う。
「何か、佐伯さんがすごく必死だったので……可愛くて止まりませんでした」
「…っ……」
一ノ瀬くんはキスを止めるのが名残惜しそうに、もう一度だけ、触れるだけの口付けを交わした。
「…唇、少し赤くなっちゃいましたね」
「誰のせいだと思って……」
「俺のせいですね」
全然悪気は無さそうに、一ノ瀬くんは俺の唇に指を添える。俺にはそれすらも恥ずかしくて、目を逸らした。
だって、こんな態度を取ったって、嫌じゃなかったんだ。
でも、そう言うと一ノ瀬くんはまたキスをしてきそうで、だから一ノ瀬くんに聞かれるまでは、そんなことは言ってやらない。
「唇荒れる前に、手入れしましょうか」
一ノ瀬くんは、俺が目を背けたことなんて気にせず、そう心配してくる。もう、触れていた手は退かしてくれたから、俺は視線を上げた。
「でも俺、リップとか何も持ってないですよ」
「それなら、俺使ってないやつあるので、それ使ってください」
言ってから、一ノ瀬くんがベッドから降りようと布団を捲る。しかし、俺は咄嗟に布団を引っ張った。
「…待ってください!俺、服着てないっ…」
今、布団を取られたら全部一ノ瀬くんに見えてしまう。
一ノ瀬くんは今更、だなんて言うんだろうけど、突然だったから恥ずかしかった。
それなのに一ノ瀬くんは、そんなのお構いなしとでも言うように剥ぎ取ろうとする。
「…そんなに恥ずかしいですか」
「恥ずかしいです!」
だってこんなの、何回見られたところで慣れるものでもない。
それに、一ノ瀬くんの身体はすごく引き締まって、何も恥ずかしいことなんて無いだろうけど、俺は一ノ瀬くんみたいな筋肉が少なかった。
女性、とまでは言わないけど、本当に腹筋とかは薄っすらくらいしか無い。
「俺は結構、佐伯さんの身体好きですよ」
「……馬鹿、ですか」
よくそんなこっ恥ずかしいことが言えたもんだ。
「もういいですから、そういうの。とりあえず、布団は持って行かないでください…」
「分かりました」
一ノ瀬くんのいるところだけ布団を捲り、一ノ瀬くんはベッドを降りる。俺は何となく見ていられなくなって、一ノ瀬くんから目線を外した。
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