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無理
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「阿久津くん、こんなところでどうしたの?」
助けてくれ。とにかく助けてくれぇえ!
こんな状況を目の前にして、″こんなところでどうした
の?″なんて言えるこいつはすごい。どう見ても現場だろ
うが!
「あー?お前一年のあれか。イケメン王子様だっけ?」
男が鼻で笑いながらそう言う。
違う違う大分違う、腹黒悪魔の大間違い。
「そうみたいですね。それよりも、何か楽しいことをしていたみたいですが。」
「あぁ、まあな。だよなぁ……?」
「ひぃっ……っ、」
もう、頼むから耳を舐めないで欲しい。
「だからさぁ……消えてくんね?」
「…………まあ、はい。いいですよ。」
え、嘘だろ。こいつに人を助けようという心なんてあるとは思えんが、こんな状況を目の前にして知らんぷりでどこ
かに行くなんて人間終わってるぞお前えぇ!
そんなことを考えているとき、後ろからカシャッ、という
音が聞こえた。
「……おい、てめぇ何してんだ。」
「いえ。ただとても楽しそうに見えたので、記念撮影でも
と思いまして。………あぁでもこれ、うっかりどこかで
見られたら、先輩大変ですよねぇ…。」
「消せ。」
「嫌です。」
突然俺の上から退いた男は、どうやら先輩らしい。その先
輩は、立ち上がるとニコリと微笑んでいる相楽に近づいて
いき、物凄い勢いで拳を振り上げた。
そして、ごっ、という鈍い音が鳴り響く。
「…っ。」
え、ちょっ、これやばいんじゃ……!?
「これより酷ぇことされたくなきゃ消せ。」
「……ははっ。」
殴られたというのに、何故か先輩を嘲笑っている奴。
なんだ?殴られたら頭おかしくなったのか?
俺が戸惑いながら必死に首を後ろに向けて状況を見ている
と、次の瞬間、何が起こったのか分からなかった。
ただ、今説明できるのは、地面に倒れている先輩と、それ
を見下すあいつがいるということだけ。
「先に殴ったのは先輩の方ですから、もう何も問題ありま
せんね。」
こいつが先輩を殴ったってことか……?
「…その人に手ぇ出したら、どうなるか思い知らせてやるよ。」
………?
なんか今相楽がボソッと言った気がするが、何て言ったんだ…?
「がっ……は、」
「もう、めんどくさいなぁ。」
追い打ちをかけるように鳩尾を狙って蹴る姿は本当に悪魔
にしか見えない。
先輩が気を失ったのか、そちらを見なくなって視線を俺に
向けてくる悪魔。
「…はっ、滑稽な姿だな。笑える。」
なっ、くそっ!本当のことだから言い返せない!
そして当然のごとくキャラ変わりすぎ!
…………悪魔に助けを求めるなんて、情けなくてほんっと
うに嫌で嫌で仕方がないが、ここで言わなかったら俺はほ
ぼ裸の状態で一晩を過ごすことになるだろう。
だから、俺も覚悟を決めよう。
「あの、相楽……。頼む、助けてくれ。」
「はぁ?もっとちゃんとした頼む態度があるだろ。」
そう言って、悪魔は俺の前まで歩いてきてじゃがむと、俺
の顎を掴んで持ち上げた。
「もっと可愛く、お願いします、だろ?……あぁ、根暗のお前に可愛いは失礼か。」
「っ……!」
くっ………、
無理ぃぃぃいいいいいい!!!
やっぱ無理!コイツに手助を求めるなんて、自尊心が軽く
破壊される!なのに、なのにこいつはすごく楽しそうな顔
をしてやがる。
突然、前髪がわけられた。
と、思ったら。
カシャッ──。
再び聞こえたカメラ音。
……………………は。
「体まで、全部写ったな?」
もう、言葉すら出ない。
「いい顔してるじゃん。安心しろよ、これの代わりに拘束
は解いてやるから。」
なっ………。
何様だ、とか、写真なんか撮りやがって信じらんねぇとか思ったが、結果的に俺はこいつに助けられたって、ことなのか?
怒りでいっぱいだったはずなのに、いや、今も怒りでいっぱいだが、助かった。そう思ったら、俺の意志とは関係なしに、涙が勝手に溢れてきた。
それを見た相楽は少し驚いたような顔をしたあとに、顔を
歪ませた。
くそ…。こんなとこ相楽に見られたら、また馬鹿にされて…
「めんどくせーな…。」
そんな言葉が聞こえてきた直後に、頭に手が乗せられる感
覚がした。
え…………。
なんだこいつ、慰めてくれてる…のか?
いやいや、そんな事あるはずが無い、と思ったが、撫でて
いる手が乱暴ではないことに気がつき、俺は思わず俯いて
しまった。
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