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愛を歌うよ
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歌手(高校生)×マネージャー
(嘔吐)
47都道府県全国ライブ最終日
「今日もよろしくお願いします。」
彼はすれ違うスタッフたちに笑顔で挨拶をして歩く
昔からよく作られた彼の営業スマイル
出会った頃には騙されていたスマイルの裏側には
彼の緊張とストレスがあって
本番前の彼の内心はいつも穏やかではない
今日だって
楽屋に入った途端そのスマイルは崩され
彼はその場に座り込む
「大丈夫か⁇」
傍により肩を抱く
近くで見る彼の顔は真っ青で
額からは汗が吹いている
肩もかたかたと震え
大丈夫⁇という質問も
酷な質問に思える
「やばいやばいやばい…失敗する……やばい、やばい……」
彼は首をふるふると横に振りながらそう呪文の様に唱え始める
「大丈夫、大丈夫」とこちらも呪文の様に唱え
こつんと額を併せ、彼の肩を抱き背を撫でてやる
「うー……マネージャー…やばいよぉ………気持ち悪い…吐くぅ……」
不意にちらりと彼の目線が俺の目と合い
瞳に涙を浮かべ彼がそう言った
冗談の様に聞こえもするが
これも本当なんだよな
額を彼から離し
今では常時携帯している袋を取り出し
彼の口元に寄せる
「う……」
眉を寄せ軽く嘔吐く
しかし中身は出ない
込み上げているものはあるのだろう
はぁはぁと苦しく息をし、苦しそうに何度か咳をした
「こっち、持って…」
袋を持つ片方の手を離し
震える彼の手に持たせる
空いた方の手で彼の背を強めに摩る
それが刺激となり君はぴくんと跳ね
袋にびちゃびちゃとどろどろとしたものを吐きだした
「ん……げほっげほ……おえっ……えっ………」
一度吐き出してしまえば勢いは止まらない
朝ご飯も昼ご飯も
吐き出されたそれなんかよりも少なかった
彼は胃袋ごと吐き出すんじゃないかと思うくらい吐き続ける
「……っ……はぁ…はぁ……うっ……はぁ、はぁ…」
吐き出し終えてもまだ嘔吐きは止まらない
吐物の臭いがそれを助長させてるかと思うと
袋を少し嘔吐きが落ち着いた時に変えてやる
それでもまだ彼は嘔吐く
「マネー……ジャ……やばい……オレ…オレ…うっ…しっ、ぱい…し、そ……」
ぎゅっと目を閉じれば
吐いた時に目に溜まった涙がぽろりと溢れる
彼は失敗なんかしたことない
それでも彼は失敗を恐れている
「大丈夫、大丈夫だよ。失敗しても、俺がついてるし、何のために俺がお前の傍にいると思ってるの⁇」
ふわふわとした彼の髪を撫で
ぐっと髪を自身に近付けると
彼の整った口に口付ける
酸っぱくも甘い唇
「……んっ…」
首を傾け開いた唇から舌を進入させると
彼は艶めいた声を発する
「終わったら続きしよう。」
唇を離せば透明な糸が唇から引いた
それを指できゅっととってやるとそう告げる
彼はこくんと大きく頷くと大きく深呼吸をした
水を渡しうがいをさせる
そして、吐いて渇いたであろう喉を潤わせる
本番開始30分前
舞台袖にスタンバイする
「俺は正面で見とくよ。お前なら大丈夫だ。」
ぎゅっと彼の手を握ってそう告げる
ちゅっと手の甲にキスをし
今回の緊張はものすごいもので
いつもなら楽屋だけでしか吐かないのに
楽屋から舞台袖にくるまでに
トイレで吐いた
でも、お前ならきっと大丈夫
そう思い俺は舞台袖から姿を消し
スタッフ席の彼の真正面になる所に立つ
本番開始のアナウンスが流れる
彼が舞台袖から現れる
ファンたちがきゃーきゃー騒いで
それに笑顔で応え、みんなに手を振る彼
みんな、愛してるよ‼︎
舞台真ん中に立つと
彼はそう観客席に向かって叫ぶ
みんなに向かって…ファンからしたらそうだろう
けれども、きっと彼は俺に向かって叫んでるんだろうな
そう思うとふと笑みが零れた
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