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声の主 2
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ぴちゃん……ぴちゃん……ぴちゃん………
何処からだろう…音が聞こえる……水の音だろうか…?俺はどうなったんだ…
目が…開かない……身体も動かない……息も苦しくない……俺は死んだのだろうか…?絶対成功させてやるって思っていたのに……声が無くなるだけじゃなくて、あっけなく死んでしまったのか?
情けない……何も出来ない自分が情けなくて仕方が無い…なんで俺は何も出来ないひ弱な人間に生まれてきてしまったのだろう……
『…何故(なにゆえ)、泣いておるのだ?』
……ああ…またお前か…どうせ一部始終見ていたんだろ?
『まぁ、そうだな』
だったら、俺がこの動かない身体で泣いている理由ぐらい簡単に分かるだろう?
『理解出来ぬな。何故死んでもおらぬのに
そう、めそめそと泣くのじゃ?』
死んでない?そんな理由あるか!現にこうして身動きも取れないでいるし、あれだけ苦しくて気持ち悪かったのもなくなっている!これを死んだ以外の何だと言うんだ!
『我は嘘などつかぬ』
だったらこれは何だって言うんだ!
『我が一時的に仮死状態にした迄じゃ』
仮死、状態…?だったら俺が動けない理由もお前かなのか?
『我が命じれば動けるようにも、
眼を開けることも出来るぞ』
だったら今すぐ動けるようにしてくれ!早く目を覚まして兄ちゃん達の所に行かないと!
『そう言うと思った故、動けないようにしておるのじゃ』
用件があるならさっさと言え!
まぁ待たれよ、という声と共に何かが喉に触れた。形や動きから見ておそらくこの声の主の手だろう、と綾瑠は思った
『今ここにあの者達の力が入っておるであろう?』
綾瑠がああ、と相槌を打つと相手は話を続けた
『今から少しだけお前の此処に我の力を入れて
収めやすくしてやる』
なっ!?
『案ずるな。悪影響は及ばさぬ故、
素直に受け入れて欲しい』
なんで顔も名前も知らない奴のことを信じなければならないんだ?
『おー、そうであったな。これは失礼した
我の名は泉(せん)じゃ』
泉?
『ああ、性別の判断は其方に任す』
任せるって…そういうものじゃないだろ
『我の場合はよいのじゃ。なにしろ我は神だからの』
神?神って…お前頭大丈夫か?
『我は至って普通じゃ。今は分からぬかもしれぬが
いずれわかる日が近いうちに来るであろう』
綾瑠がなんと返したらいいか迷っている間に、泉と名乗った声の主は指をピクッと動かして言った
『そろそろ時間切れじゃ。仮死状態が続けば
元の体に戻れなくなる』
ちょっと待て!話は、
『1度だけ…今回だけでもよい、
我を信じてはくれぬか?』
……死なないで済むんだよな?
『ああ』
力は習得できるんだよな?
『我の力で手助けはするが、
出来るかどうかは本人次第じゃ。其方の素質と
やる気が鍵じゃよ』
…分かった……今回だけ信じてやる
『誠か。感謝するぞ綾瑠殿』
なんで俺の名前を!
『我が神だからじゃ………本当は違うがの……』
神までは聞き取れたが、後からボソッと呟いた言葉は上手く聞き取れなかった
『では、ゆくぞ』
ああ
『我、魂を導く者。この者に光の和を』
すると、首が少し温かくなった。それと同時に、綾瑠は浮遊感に見舞われた
うわっ!?どうなっているんだ!
『我が力を与え習得の手助けをしたと同時に、
仮死状態の術を解いた迄じゃ』
戻れるのか?
『ああ、では健闘を祈るぞ』
ありがとう、泉。感謝する
綾瑠が感謝の言葉を述べると、綾瑠の身体は光に包まれ姿を消した
それをずっと見つめていた泉は目深に被っていたフードを取り、にやっと唇を歪ませた
『久しぶりに話せたの……器よ』
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※光の和の和は「和」であってます。決して、「輪」ではありません
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