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距離
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俺を谷原先生と呼ぶのは、海斗の心の距離があからさまに遠い事を示している。そんな事に傷付くようなか弱い人間じゃなかった癖に、海斗の事となるとまるで自分をコントロール出来ないのだ。
子どもの手を引きやってきた海斗は、もう立派な人の親だ。あの頃のような弱さなど微塵もなく、強く逞しく生きている。
そうせざるを得なかった、と言うことでもあるんだろう。
「海斗、お前に頼みがある。」
「え?」
「今日の夜、少しだけでもいいから時間をくれないか。もちろん、空君も一緒でかまわないから。」
俺は踏み込まなきゃならない。今でもおまえが好きなんだと伝えなきゃならない。そうでもしなきゃ、俺はずっと弱いままでいるしかない。
俺が強くなれるのは、
おまえが居てくれるからなんだ。
「…いいですけど…あまり出て歩けないので、うちでも構いませんか?」
「あぁ。その方がいい」
「分かりました。あの、とりあえず急いでるので、時間は後で連絡します。」
海斗の言葉に俺は驚いた。
「おまえ…俺の連絡先…」
再会してから今日まで、連絡先を交換してはいない。でも、俺の連絡先は変わってなくて、それはいつでも海斗が連絡出来るようにと思ってそうしてた。今までその思いが報われた事はなかったけど、それでも海斗は俺の連絡先を残してあったと言う事だ。
「すいません…俺だけ勝手に…」
「…いいんだ。全然…」
むしろ嬉しかった。海斗は完全に俺を断ち切りたかったわけじゃない。そう分かっただけで、俺はまだ諦めなくていいんだと思える。
「連絡待ってるから。」
そう告げると、海斗も少しだけ微笑んで「はい」と言った。もう大人だと思ったけど、笑うとやっぱり少し子どもっぽい。
俺に反抗していたあの日々を、思い出す。
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