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隠せない嫉妬
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「話の途中ですいません…」
そう言いながら戻って来た海斗の態度がギクシャクしているのは、帰って行った桜庭という男の存在のせいなのは明らかだ。
「彼とは…随分と仲が良いようだけど…」
「そ、うですかね?あまり…そうでもないんですけど…」
「でも動物園に誘われてただろ。何もなくてそんな誘いがあるわけない。」
「でも本当に桜庭さんとはっ…」
目も合わせてなかった海斗が俺を見て口を噤んだ。
「桜庭さんとはなんだ?」
「…本当に…本当にそんな関係じゃなくて…」
「おまえはそうなのかも知れないけど、彼にとってはそうじゃないかもな。」
何を責める事がある。
俺は海斗の何者でもなく、文句を言う権利なんて持ち合わせていないってのに。
「別に俺に弁解する必要はない。…良かったじゃないか、今は支えてくれる人もいるんだな。」
イライラする。
どうしてこんな事を口走ってるんだ。
「…谷原先生…」
「それな、俺はもうおまえの先生じゃないんだから、そう呼ぶのはおかしいだろ。」
海斗が困惑した顔をする。こんな時だけ俺の顔を見るのはやめてくれ。
俺の方が目を合わせられない。
「谷原…さん」
「はっ、随分と遠くなったな。」
何が言いたいんだ、俺は。
桜庭という男を海斗は桜庭さんと呼ぶ。俺を谷原さんと呼ぶそれは、同じ位置か、それとも…
「だって…俺にはもう…あんたを渓史さんって呼ぶ権利はないじゃん…」
まるで喧嘩腰の物言いが妙に懐かしい。
「呼べば良いだろ。間違いじゃない。」
「間違いとか間違いじゃないとか、そういうんじゃなくてっ!」
「名前だろうが苗字だろうが大した違いはない。」
嘘だ。誰よりこだわってるのは俺だ。
海斗、俺を「渓史さん」と呼べ。
でないと俺は…
こんなみっともない嫉妬すら、
隠せそうにないんだ。
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