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友とは
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あんな事を言う為に海斗に会いに行ったわけではなかった。あの時の事を聞いて、そして今も気持ちは変わらないんだって事を伝えるつもりだった。だけど、今の海斗の幸せは俺とではなくて、あの桜庭という人とのものじゃないのか。なんて思う。
俺の知らない3年間。たかだか3年、そう思いもする。実際海斗と再会するその日まで、長い時間を何もなく生きていたが、このまま一生会えずに終わるのか、そう考えたら3年はやはりたかだか3年なのに。
海斗には、この3年が数字に見るより長くて深い。
その3年間を支えてきたのが彼ならば、俺にはそれを奪う事も出来ず、気持ちとは裏腹に海斗の背中を押すしかない。
次はちゃんと幸せを掴んでくれよ。
そう願いながら。
「さて、聞きたい事は聞けたから今日は帰ろうかな。」
少し明るい調子でいうと、海斗は何も言わずに俺を見る。その目に宿る意思がうまく読み取れない。
「空君にお絵描きはまた今度ねって言っといてくれ。」
「あ、はい。」
「…友人として、また会いにきてもいいか?」
わざわざ「友人として」なんて、言う意味があるのか。俺は臆病を働かせて下心を隠したかった。
「はい。空も…喜ぶと思うんで」
「うん、じゃあまた。俺から連絡してもいいんだろ?」
海斗からくれた電話は非通知ではなかった。俺はその番号を登録していいのか悩んで、結局履歴に残したままになっている。
「えぇ、仕事中は出られない時もありますけど…」
「でもしていいのなら、遠慮なく。」
友人として。
こんな邪な友人がいていいのかよ。
そう思えば笑えてきて、少し楽になる気がした。
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