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曖昧なもの
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こんな事されても困るのに、桜庭さんは空の為にチャイルドシートまで買って…少しずつ詰められている気がしてしまう。
気がするっていうか…うん。
「動物園はいつ振り?」
桜庭さんが車を走らせながらこちらを見ずに聞いてきた。
「もうずいぶんと行ってないです。空が生まれてからは一度も…」
「じゃあ空くんは生まれて初めてか。」
「はじめてー!どうぶつえんに うしさん いるー?」
え、動物園に牛。
「い、いるかなぁ?」
俺は過去に動物園で牛は見た事がないけど、いない動物園だったってだけかも知れないしな…
「空くんは牛が見たいの?」
「みたいのー!テレビでぎゅうにゅうのやつ、ギューってやってたの!」
しかもホルスタインか…尚更いない気がするぞ。
「空ー、あれは動物園じゃなくて農家さんなんだよ。農家さんで乳搾り体験やってますよーっていう紹介の番組だったんだよ。」
「のーかさんは、どうぶつえんとちがう?」
それには桜庭さんが答えた。
「違うねぇ。動物園にはもっと色んな動物がいるんだよ。お家じゃ飼えないような象とかキリンとか、熊とかね。空くんは好きな動物はいないの?」
「んーとね、イルカ!」
「イルカかぁ。イルカは水族館なんだけど…でもきっと今日行く動物園にいると思うよ。」
「やったぁ!」
「イルカショーもやってるはずだから観に行こうね。」
「うん!」
元気よく返事してるけど、イルカショーが何かも分かってないんだろうな。
「そういえばどこの動物園に行くかとか、俺何も決めてなくて…」
「うん?あぁ、大丈夫。動物園と水族館が併設してる大きな動物園があるんだ。イルカが見たいならそこに行こう。ちょっと時間はかかるけど、遠くもないし。」
「なんかすいません…」
「どうして?俺は嬉しいよ、君たちと少しでも長く居られるじゃない。」
どうしてそんな照れちゃうような台詞を普通に言うんだろう。桜庭さんの何事もないって顔で運転しているその横顔を盗み見る。
大人の、男の人だ。
爽やかで若作りな人って思ってたんだけど、
今日はちょっといつもと違って凛々しくもある。
この人に頼れたら…幸せになれるのかな。
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