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α
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ご飯を食べ終えて少しのんびりしてから、空は眠くなったみたいで「おふとん いく」って言い出した。まだ歯も磨いていなかったから慌てて止めて歯を磨かせる。とは言え、まだ自分でちゃんと磨けないから最後は磨いてあげなきゃいけなくて、その時になったら「かいくーん」って呼ばれる。
「今行くー」
「僕がやってあげるよ。こう見えて歯磨きは上手いよ?」
「こう見えてって、上手いだろうなって見えてますよ。」
「本当?割と不器用なんだけどね。」
「そうなんですか?」
「うん。他の先生たちにはよく言われるよ。まるでαじゃないみたいだって。」
そう言われてハッとした。どうしても桜庭さんがαだって事を忘れてしまう。昨日のあの獲物を見るような目は、間違いなくαだったって言うのに。今日だってそんなことも忘れて空の事を見てもらって…子どもに危害を加える人ではないだろうけど、昨日のことを考えたらこの状況はあまり良いとは言えない。
「…桜庭さんは、α…なんですよね」
「そうだけど、忘れてた?」
「いや…」
「よく忘れられるよ。昔からそう。でも僕はαとかΩとかそういう隔たりみたいなのは好きじゃないから、忘れてくれるならそれでいいし、αっぽくないって言われるのも案外好きなんだよ。」
「そう、なんですね」
俺はΩだから同じように思う事はあるけど、αでもそう思う事があるんだってなんか不思議な気持ち。
「ねー、まだー?」と洗面所から声がする。「今行くよー」と言いながら桜庭さんが向かって、それから少しして空が笑う声がした。歯磨きで笑うことなんかあるかな?と思ったけど、空が楽しそうで何よりだ。
本当はこんな風に、空に父親がいてくれたら、良かったんだろうな…
歯磨きを終えて空が「おふとん いくねー」と行って寝室に入って行った。手がかかるよりはいいんだけど、割と自由人。誰に似たんだろ…
「僕は帰るよ。」
「あ、はい。すいません遅くまで…」
「いや、こっちこそ晩御飯まで頂いちゃって。美味しかったよ、ありがとう。」
玄関に向かう桜庭さんを見送る。
「今度は僕にご馳走させて。」
「えっ、いや、俺のなんて大した事がないんで、気にしないで下さい。」
「そんな事ない。本当に美味しかったよ。…なんか、羨ましいな。」
「…え?なにが…」
「空くんと木下さんの関係。友達のような家族のような、良い関係だなって見てて思う。出来ればね…」
ボクハ キミタチト カゾクニナリタイ。
そう耳元で桜庭さんが呟いた。
「えっ」と声を漏らした直後に塞がれる唇。突然の事に驚いて思考が一瞬止まったが、すぐに拒絶の意思表示を見せて桜庭さんの胸を押す。けれどまともに抵抗できずにそのまま体を抱き締められる。
「んっ…ん!」
唇を割り開かせて無理矢理舌を差し入れてくる。逃れるように首を横に向けるけど、髪の中に手を差し込んで、髪を引かれて戻される。
痛い
悲鳴を上げたくても空には気付かれたくなくて、貪るように口内を蹂躙する舌を今は受け入れるしかなかった。
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