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チビチビペア
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「明日、身体測定があるよなー」
リョウの呟きに、敏感な反応を示したのはシュウとサガラだ。
同時に絶望しきったように肩を落とすシュウとサガラは、困ったように顔を見合わせた。
お互いの憔悴しきった表情を見て、更に気分を落とす。
「どうするよシュウ!明日は身体測定だってよ」
「嫌だ!俺うけたくない!」
「俺も嫌だっつーの!一緒にサボろうぜ!」
「そんなことさせると思ってるのか」
現実逃避しようとしている二人の首根っこを掴み、呆れたまなざしで見下ろすハルト。
余裕綽々のハルトに、きっと怒りが込められた視線が向けられる。
首根っこを掴んでいたハルトが、渋々離せざるをえないほどの憤怒だった。
「ハルトはいいよなー!身長高くてさ!いつも上から俺らのこと見下してんだろ!」
「っつーかよ!背が高くていいことってあんのか?戸棚の上にある荷物とか本とかとれるだけじゃねーか!威張るんじゃねー!」
ハルトと同じぐらい背丈があるユツキが、切なそうに反応を示すが、いら立ちに支配されたサガラの目にはとまらない。
「誰がいつ威張った。大体身体測定が嫌で学校をさぼろうとするな。小学生か」
まともな正論を吐くハルトの肩を、高身長であるリョウが気安く叩いた。
「ははは。放っておいてやれハルト。こいつらは自分の背の小ささに絶望しているんだ!そういう時はそっとしておいてやるのが一番だ。ナイーブになっているんだよ」
「誰のせいだと思ってんだ!」
自分でまいた騒動なのに、無関係を貫くようなリョウの態度に、サガラはこめかみに青筋を浮かばせる。
平均並みの身長であるサガラだったが、相棒のユツキが少々高めなのでちょっとだけ気にしていたのだ。
彼と同じ背丈にまで育って、同じ世界を見たい。
どこまでもバカップルな願いを込めて、一度牛乳を漁り飲んでみたが効果は見られず。
低いと馬鹿の種にもされやすく、昔はちびとよくからかわれた。
そのたびに般若の形相をしたユツキがとっちめてくれたので、あまり気にはしていないが、とにかく背が小さいのはコンプレックスにしかならない。
「俺だってよ!ユツキとよく似た背丈になりてーよ!そんで、あいつの手を借りずに本棚の一番上にある本をとりてえんだよ!」
「サガラ…そんなこと、考えていたのか」
身長をどう縮めようかと思案していたユツキが、若干頬を緩ませながらサガラの頭に手を置いた。
急なコミュニケーションに赤くなりながらも「子供扱いするな!」と表面だけ突っぱねるが、嫌そうには到底思えない。
ユツキもそれを理解しているので、気にせず頭に置いた手を動かし続ける。
「背が低くても。サガラはサガラだから。ありのままのサガラが好きだ」
「なっなにいってんだよ!ユツキの馬鹿!」
「本心だ」
「うっうるせー!くせぇ口説き台詞が俺に通用するとでも…!」
「嫌いじゃないだろ?」
「もう黙れ!頼むから!」
よくそんな甘い言葉が吐けるもんだ、と後ろのほうでハルトが顔をゆがめていた。
訊いてるだけで胸やけしそうだ。
シュウも生クリームを一気飲みしたかのような笑みを浮かべている。
残された3人は自然とバカップルから距離をとり、彼らはいないものとして会話を続けていた。
「リョウもさーもっと早く言っててくれたらどうにでもできたのに!」
「たとえばどんなだ?」
「んーっと。鉄棒にぶら下がるとかひたすらジャンプするとか」
「馬鹿の考えを模範したかのような答えだな」
皮肉をいうハルトを下から睨み、咳払いをして話を再開する。
リョウは喉の奥で笑いをかみ殺していた。相変わらず素直じゃない、と茶化したかったがそんなことをすればハルトの照れ隠しパンチが飛んでくることは免れないので黙っておく。
「頑張れば身長だって成績だって伸ばせれるんだぞ!」
「成績は無理だろ」
見事にはもられたシュウは、しゅんっと落ち込む。
「とっとにかく!俺には必殺技があるんだからな!」
「ほう?」
「明日、首を洗って待ってろよ!」
なぜか捨て台詞を叫びながら走っていたシュウだったが、途中で石に蹴躓いて転んでいた。
ハルトはため息をついて、リョウに断りを入れてから、呻いているシュウの元まで駆け足で向かったのだった。
「秘策ってなんだろうなぁ………楽しみだ」
残されたリョウはどこか寂しげに呟いた。
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