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狂犬の秘策
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「結構やるじゃねえか。二人も残るなんて。まっ俺以外雑魚の集まりだからしゃーねーけどな」
どこまでもふてぶてしい。
仲間たちを何のためらいもなく雑魚と言い放てるその神経がシュウには理解できなかった。
自分の力を過信しているようにも思えたが、過信するほどの実力はコートの外からでも窺えた。
何でこんな男を中心に団結できるのだろうか。
同じクラスでないと分からない良さでもあるのかもしれない。
「そうだろ?俺たちもやるときはやるんだ」
皮肉にきっちり返事をするリョウ。
彼の表情からもまだ笑みは消えていなかった。
「リョウはともかく、そこの嫌味野郎まで残れるとは思いもしなかったぜ。一応褒めといてやらぁ」
「それは嬉しいな。お返しに鉛玉をくれてやる」
この場合の鉛玉は顔面ボールのことだ。
「いっつも冷静沈着なてめぇがそこまでキレるなんざ珍しいなぁ。なんだ?あのアホ毛アウトにしたのがそんなに気に食わねえかよ?」
扇動するヒナトの言動に、ハルトは真顔で答える。
「ああ、気に食わない」
「やけに素直じゃねえか。きっもちわりぃ!」
ひゃははははっ!と漫画の悪役みたいな奇声をあげるヒナト。
リョウは狂ったように笑い声をあげるヒナトをどこか訝しげに見つめていた。
いつものヒナトとのギャップに戸惑いつつも、こんな風にぐたぐた時間を引き延ばす性格ではなかったはずだ。
何か企んでいる。
早く攻撃に転移したいがボールはヒナトの手にある。彼らからは行動できない。設けられた時間が過ぎると、人数の多い方が勝利となる。このような時間稼ぎに意味があるとは。
「ん?」
時間稼ぎ?時間………。
引っかかりを感じたのでそこを重点的に考えていくと、すぐにヒナトの秘策が読み取れた。
「ハルト!気をつけろ!」
「なに?」
リョウに目を向けた瞬間、ハルトの目が大きく見開かれる。
自分を捉えて投げられたボールに釘付けになる。なぜ外野から飛んでくる?ボールはヒナトが持っていたはずなのに。
そんなことを考えている間に迫ってくる脅威。
リョウが突き飛ばしてくれなかったら肩に突き刺さっていただろう。
代わりにリョウの背中に直撃し、衝撃に顔を少しだけしかめる。
そのまま外野に引っ込むことはせず、最後の悪あがきで再び外野に転がって行こうとしたボールを無理やり軌道修正をした。
「後は任せたぞ!」
「…任された」
敵の手に渡らず無事転がってきたボールを拾いあげ、ぎろりとヒナトを睨みつける。
「これが目的だったのか」
「残り時間10分経過したらダブルになるんだろ?それを狙ったまでだぜ」
人数的に少ない方に球が支給されるのは、だいたい全員把握していた。
だが白熱した試合のせいか、詳しいルールを忘れていたのだ。
俺としたことが。自分の落ち度に歯噛みしたい。
「流石のせこさだな。呆れてものも言えない」
「アホ言うんじゃねえ。策略と呼べよ負け犬!これでてめぇをやりゃ俺らの勝ちだ!」
「こっちにほいほい武器与えといて誇るな単細胞。俺がお前ごときに負けるはずがないだろ」
「それを負け犬の遠吠えって言うんじゃね?どっちにしろてめぇが俺に勝つなんて夢物語ありえねーつーの!」
対等な立場に立とうがヒナトの余裕は未だに健在だ。
じっとり汗が首筋を流れて不快感を感じるが、緊迫した空気に冷やされる。
彼らの間に鋭い雷撃が迸り、敵対心を剥きだしにした会話を繰り広げていたが、やがて双方とも真剣な顔つきになった。
「んじゃくだらねぇ茶番はとっとと終わらせるか。くたばれ」
先手必勝と言わんばかりに唐突にボールを投げる仕草を見せる。
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