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「あっあの、ずっと好きで…ずっと萱田君のこと見てました。本当は努力しているところとか、知ってます…」
ハルトのどこを好きになったのかを赤面しながら語る少女。
一生懸命に伝える姿はどこか愛らしく庇護欲をあおるような可憐さだ。
一瞬しか見ていなかったが、綺麗な茶色のストレートヘアー。髪の毛を手入れを怠っていないのは一目でわかる。
つまり相当の美人ということで。
奥ゆかしい物言いでハルトの長点を告げる少女に、シュウは好感をもつと同時に、鋭い痛みも感じていた。
これが初めてじゃないのに。
容姿も頭脳も運動も何もかも完璧にそつなくこなすハルトがモテないはずがなく、シュウがいるというのにお構いなしな告白をぶつける女子生徒に何度か遭遇した。
そのたびにハルトは歯に着せぬ言い方でばっさり切り捨てていたのだが、今回は即答していない。不安が膨れ上がる。
「私、萱田君と釣り合うような女じゃないけど、頑張ります!萱田君と肩を並べて歩けるような…立派な女性に。だから、付き合ってください!」
頭を下げる気配が伝わってきた。
真剣だ。この女子生徒は今までの女子とは違い、真面目にハルトに告白している。
俺のほうがもっとハルトのいいところ言えるし、努力しているのも知ってる。
こんな女子生徒より俺のほうが。
俺のほうが俺のほうが。そんな相手と比較して勝ち誇った常套句ばかり浮かんでくる。
頭がもやもやして気持ち悪いし、心臓も痛い。何もかも痛くて苦しい。
今までこんな症状起こらなかったのに、なんでだろう。頭痛が襲う頭で考えてみる。
「あの…どうなんでしょうか?」
無言のハルトに耐えきれなくなった女子生徒が答えを急かした。
それに背中を押されて、ハルトは軽く息を吸った。
離れた吐息に、シュウの中の何かがキレた。
無謀にも転落防止の役割を果たしている手すりを飛び越え、真ん中あたりの段差に危うく着地した。
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