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来訪者2
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「ふぅ…」
小さく息を吐き、車を駐車させた。ハンドルに腕を置き、瞼を閉じる。何か嫌な予感がする。それでも家には戻らねばならない。三守は車から降りた。
ドアの前まで行き、一息つく。いやな予感はまだぬぐえない。
小さく、よし、とつぶやくとドアに手をかけドアを開いた。
「ただいま…」
そういいながら靴を脱ごうとして足元を見る。
見覚えのないシューズ。
「お邪魔してるぞ」
今朝別れたばかりの二都が出迎えていた。
二都はにこやかに笑うと、三守の手から鞄を持ち去る。妻さながらの行動で三守の世話を焼いていく。
「待て待て待て。なんでお前がいる」
「ああ、百合子さんに誘われたのでな」
「は…百合子が?」
信じられない三守は、百合子の姿を探そうと目の前に立つ二都の後ろをのぞいた。
百合子と目が合うと、百合子はそれはそれは美しい笑みを浮かべて手を振ってきた。
なんでこいつを入れた。三守の頭の中には『今すぐ追い出せ』という言葉しか出てこなかった。
二都に奪われていない方の鞄には、昨日来ていた衣服が入っている。とりあえずそれを洗濯機に放り込むと、三守は再びリビングに戻り百合子の向かい側に座った。
「なんで入れた」
「二都さんとお話したくって」
「堂々と浮気か?」
「そんなわけないじゃない!私と二都さんよ???ありえないわぁ」
ふふふ、とかわいく笑う百合子を呆れた目で三守は見た。何故か当たり前のように百合子の隣に座っている二都。
おい、なんでお前がそこに座ってるんだ、と三守は心の中で毒づいた。
とにかく、事の経緯を聞かねばならない。謎の焦燥感にかられた三守は、口を開いた。
その瞬間、百合子の携帯から音楽がなる。
「!もしもし~!!千代子さん~~!!お久しぶり!!お茶??もちろん!今から行きますね!!」
二つ返事で誘いに乗った百合子。電話を切ると、三守を見て「そういうことだから!」と言い残し、出かけて行った。女の行動力は恐ろしいものだ。
三守が茫然と百合子の出て行ったドアを見つめていると、二都が笑いだした。
「…何笑ってる」
「いや、何も」
「早く出ていけ。俺は入れていいとは言っていない」
椅子に踏ん反りがえりながら三守は言い放った。ついでに、犬を追い払うように手を振って。
二都はため息をつくと、立ち上がり三守のそばまで来た。
「なんだよ」
二都の行動が読めない三守は二都から少しでも離れようと体をねじる。そんな三守を見て、またもや二都が笑う。
「お前子供っぽいな。いつもそんななの」
「なわけねーだろ。文句言うなら帰れ」
顔をだんだんと近づけてくる二都に三守は耐えられず顔をそらした。近すぎる。
すん、と二都が匂いを嗅ぐしぐさをした。とたんに、眉間にしわを寄せ始める。
いつの間にか握っていた二都の手の力が強く成る。
「って…おい、二都」
「誰だ」
「は?…とりあえず痛いから離せ」
三守の言うことも聞かず、二都はさらに匂いを嗅ごうとする。三守の鎖骨に顔を近づける。
「っひ!!!お前!!」
いきなり二都が舐めた。何を確認したかったのか、なめたあとは小さく頷いて顔をすぐに離した。
「誰だこれ。一ノ瀬さんじゃあないし」
もしかして、二階堂のことを言っているのだろうか。確かに抜いてもらって(正しくはサンプル採取)はいる。しかし、たったそれだけの行為で二階堂の匂いが移るとは思えない。三守は二階堂のことを黙ることにした。
「αだろう。誰かとあってたのか」
「店に行ったから、その時にでも移ったんじゃあねえのか」
「発情につられたαが店に?マナーがなってないな、そのα」
三守の言い訳に、嫌味ったらしく返す二都。その返事を聞いて、三守はなおさら返事をしたくなくなった。じゃあ知らない、と三守は部屋に籠城を決め込むことにした。さすがの二都も、他人の家のリビングに取り残されると帰るだろう。そう三守は思ったからだ。
予想に反して、二都はしつこかった。
三守が籠城しようとした部屋にまでついてくる。図々しいぞ、と諫めるが、二都は引かない。
「誰だ。それを聞くまでは帰らん」
「ふざけんな。俺の家だ」
「もう一度聞く。誰だ」
「あのなぁ…」
部屋のドアを閉じようとするが、二都の足が間に入って閉じることができない。下手にけがでもさせて恨まれるようになったらもっと面倒だからだ。
三守があまり強気に出れないのをいいことに、どんどん足を進めてくる。
「おい!!いい加減にしろ!!」
堪忍袋の緒が切れたと、三守は一気にドアをあけ放ち怒鳴った。
しかし二都は、三守を部屋の中に押し倒した。
二都の後ろで閉まるドアが見える。三守は一瞬何が起きたのか理解できずにいた。
天井が見えた。後頭部が痛い。胸に圧迫感がある。これは二都が全体重を三守にかけてるから。
冷静に分析したところで、三守は一気に暴れだした。
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