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89(サイカ)
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「義正が貴方を残してくれて本当に良かったわ。そのおかげで秋人は寂しい思いをしないですんでる。いつも平気そうにしてるけど、あの子は寂しがりやさんで泣きむしですもの、きっと貴方がいなかったら毎日泣いてばかりだったはずよ。だから本当にありがとう。あの子と一緒にいてくれて。」
「僕は何もしてないよ。秋人が頑張ってるだけ。でも、僕も出会えて本当に良かった…。」
翠蓮は一度身体を離し、そう言った彼を見つめる。その顔は今までに見たことがないくらい優しく頬笑まれていて、サイカが秋人を愛おしく思っていることが伝わってきた。
その事に心があたたかくなる翠蓮だったがそれと同時に少しの不安を感じた。
(サイカちゃん、貴方は…。)
「それじゃ、当日はよろしく頼むね。」
「まかせて!その紅って子と一緒にいらっしゃい!私が完璧な人間にしてあげるから!」
「うん、ありがとうね翠蓮。」
「いいのよ~!それじゃ、また当日に!おやすみなさいサイカちゃん。」
「うん、おやすみなさい翠蓮。」
サイカは翠蓮に手をふりそこを後にした。
外に出てみると空はもう薄暗くなっていて、鮮やかな紺色の中に微かなオレンジを残していた。
サイカはその美しさに目を細めるとまぶたをゆっくりと閉じた。
そして、きっと喜んでくれるであろう秋人の、あの可愛らしい笑顔を想像する。
すると胸の辺りがきゅっとしめつけられるとともに、じんわりとあたたかくなり満たされるのを感じた。
サイカはまぶたを開き空を眺めながら、その胸いっぱいになった思いをのせて小さく呟いた。
「はやく会いたいなぁ。」
サイカは二人の待つ家へとその足をすすめた。
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