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残してもいいと言ったけど見事に福田は完食してくれた。
「ふぅ、ごちそーさん。」
福田は笑顔が多いな...
単純にそう思ったら言葉が口から出ていたらしい
「そうか?普通じゃね?」
この前まで関わりもなかったし、いつも不機嫌そうだなって思ってたのに、変な感じだ。
人との関わりなんてこんなもんなのか?
「ううん。俺からしたら笑顔が多くて、かっこいいなって思う」
って、俺は何言ってんだ。福田の前だと何故か自然と言葉にしちまう。気をつけないと。
静かだなと思って恥ずかしい中チラッと福田の様子を伺った。
「……こっち見んな。」
腹の底から出てるんじゃないかってくらい低い声で言われてビクッとしてしまった。何か怒らせたっけ?
「ごめん、俺なんかしちまった?」
「あー、違う。なんでもない」
もしかして、照れてる?
「福田くんどうした!照れてるのか!」
「あーもううっせ!それもあるけど違うから!」
「当たってて違うってどういう事だよ」
「今、俺は獣と戦っているのだ」
誰だお前、、、そんな喋り方する福田は知らないぞ
まず獣はここにいないし、意味が分からん。
「まぁいいや」
そう言って俺は食べ終わった鍋をお盆に乗せ、キッチンへ向かった。そこで初めて"洗い物"をした。一般人が当たり前にしていることが俺には全て貴重みたいだ。
洗い物を終えて、その後の福田は普通だったからたわいのない話をした。ほとんどが学校のことだったが、何よりも家族のことを聞かれなくてホッとした。
福田の家族の話を聞いてみたかったが俺と同じように
『家族のことは聞くな』
そんな感じのオーラが出ていたので聞かないでおいた。
話している途中で時間が気になりチラッと部屋に飾ってある時計を見た。
午後5時。もうこんな時間か。楽しい時間はあっという間だというけど、本当だな。
「.....お前、そろそろ帰ったら?」
「ん?なんで?」
福田の言葉に思わず聞き返してしまった。だって、まだ帰りたくない。あの白い箱の世界に。一人きりの、寂しい場所に。
「え、なんでって...俺もう大丈夫だし?」
「...帰って、ほしいの?」
ベッドに座っている福田を見上げながら不安げに聞いた。
ん?なんで俺こんな事聞いてんだ?まるでここに居たいみたいじゃん。いや、居たいけどさ、帰りたくないし。
うーん。なんかさっきからモヤモヤする...。
「はぁ!?
ち、ちげぇよ!!いや!違くねぇよ!!」
いや、結局どっちだよ?
福田はそう言ったあと「って、何言ってんだよ俺...」と頭をガシガシかきながらボソッと呟いた。
何を一人で焦ってるんだろ?まぁ、確かに来た時よりは体調が良さそう。
「大丈夫そうなら、帰るわ。」
「お、おう。」
「じゃ、お大事に」
「おう。サンキューな」
照れくさそうにお礼を言う福田を見て胸の奥がキュッとしまった。なんだこれ...?さっきといい今といい、これはなんだ?
そう不思議に思いながら福田の家を後にする
病院へ帰りながら、俺は考えた
───俺のタイムリミットはあと、どのくらい?
言い表せない不安がまた押し寄せてくる。残りの時間を知りたい。その時間がわかれば、その間に色々できるから。
今日も、初めてのことがたくさんできた。
俺はまだ初めてがたくさん残ってるはず。
着々とタイムリミットが近づいてきてる。
死にゆく前にたくさんのことをしたい。
後悔を、しないように。
時間はまだありますか?
お願いします。
タイムリミットを、誰か、教えてくれませんか...?
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