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side遥
〜3年前〜
ジャズが流れ薄暗く落ち着いた雰囲気のバー。
ポツポツと客の姿があるが、それらは全て男。
ここは、所謂ゲイバーと呼ばれる店で、出会いや癒しを
求めてゲイが集まる場所となっていた。
この店に初めて入った時は、独特の雰囲気に少し戸惑ったりもしたが、必死になって隠してきた自分の性癖を皆んな知っている。
バレることに怯える必要のないこの空間は、俺にとって
一番素でいられる癒しの場所となった。
ここに通い始めてしばらくたったある日。
誰かと来ている様子はなく、誰か待っている様でもない
感じの男が、店の端でぽつんとひとり座っていた。
なんだか緊張している様に見え、自分が始めてココに来た日のことを思い出し、つい顔が緩む。
あの様子じゃ、すぐに変な奴に連れていかれそうだな…。
彼から視線を少し外せば、厭らしい笑みを浮かべ
仲間と彼を見ている数人の男達がいた。
「おっと、さっそくか…」
迷わず彼の元に行き、男達から彼が見えない様な位置に座って話しかけた。
「ねぇ、よかったら一緒に飲まない?」
少し戸惑った様子の彼も、暫く話すうちに慣れてきたようで色々と話してくれた。
名前は『結斗』
まだ未成年なこと
この店には初めて入ったこと
医学部を目指していること
特に、彼の夢について話を聞いた時は自分も年甲斐もなく
ドキドキ、ワクワクした。
何より、遠目では分からなかったが、
よく見ると世間一般では確実にイケメンと形容される顔立ちの男だった事に一番ときめいた。
(声かけてよかった ー!笑)
流行を掴んだファッションもそうなのだが、
綺麗な二重の大きな目だったり、
庇護欲を誘われそうな甘えた様な唇なんかに
『男女問わずコイツはモテるな…』と確信できた。
それから何回か会う度に唯斗の優しさに好意と依存を
覚えていった。
告白して、付き合えて、それだけで幸せなはずだった。
でも…
結斗はみんなに優しい。
あの顔だから尚更モテる。
俺だけ…
俺だけに向けて欲しい。
他の奴らは知らない顔。
嬉しい顔も、悲しい顔も、痛い顔も、辛い顔も、
惚けた顔も、楽しい顔も、苦しい顔も、泣き顔も。
全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部……。
気づいた時には遅かった。
結斗は頰に手を当てて驚いた顔で、こちらを見上げていた。
その瞳は恐怖でゆらゆらと揺れている。
自分の拳にジンジンと痛みが残る。
(……俺は、何をした?)
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