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「……こんなもんかな」
夕飯時まで使わない食堂の調理場をおばさんたちに承諾を得て借りられた。
鍋で作ったお粥を茶碗に移して、最後に梅干しをのせる。
(お粥なら少しくらい食べられるはず)
……そもそも俺が作ったの食べてくれるかすらわからないけど。
でも見過ごすこともできず、お粥を乗せたトレーを持って流木の部屋へと戻った。
「……流木?」
中に入ると静かで、寝てると思ってそっと顔を覗き込む。
「どこ行ってたの。お前……」
「!」
(あっぶね!)
いきなり起き上がる流木にびっくりして持っていたトレーを落としそうになってしまった。
「ちょ、ちょっと食堂に行ってただけ……って、」
あれ? なんかコイツ……。
「……何、」
「あ、いや! なんでもないっ」
涙目と言うか泣いた? ような目元にじっと見ていたら逆に聞かれて慌てて首を振る。
泣くわけないよな! きっと風邪のせい──、
「それ何?」
はっ、そうだった!
持っていたトレーを見てくる流木に俺はベッドに腰掛けて。それを膝に置く。
「お粥食う? なんか食べた方がいいかと思って」
「……わざわざ作ってもらったのかよ」
「あー……作ったのは、俺だけど」
「お前が?」
少し驚いたような声を出す流木にやっぱいらないかと思って、言われる前に口を開く。
「い、いらないなら俺食うから! 一応売店でおにぎりとかパンも買ってきたしっ」
もしもの為に売店に寄って買ってきた袋を流木に差し出す。
けど、
「いらない」
「え、あっ」
パシンと振り払われて、床におにぎりとパンが入った袋が落ちる。
「何す「お前が食わせて」」
そう言ってトレーに乗っていたスプーンを俺に差し出してくる。
(いやいやいや! 何言ってんの、コイツ!)
「自分で食えよっ」
「無理。力入んねぇから」
「っ」
ぽすんっと俺の肩に頭を預けてくる流木に固まってしまう。香ってくる流木の匂いにくらくらする。香水じゃないから、尚更。
「悠季」
プラス掠れた声で名前を呼ばれたら、もう強制的にやらざるを得なかった。
「わ、わかったから離れろよ!」
膝の上のトレーを抑えてるせいで突き放すこともできず。やっとゆっくりと流木が離れてくれた。
(怠そうなのはわかるけど、距離が近い……!)
ほんとにマスクしてて良かったと思いながら、スプーンでお粥を掬う。
「ほらっ」
「ん」
「…………………………」
味、ちょうど良かったかな? 久しぶりに作ったから不安……。
ドキドキしながら流木の反応を待つ。
「お前、料理すんの?」
「えっ、あ、うん。簡単な奴くらいなら、母さんとよく作ってたし」
「……へぇ」
それだけ聞いて口を開ける流木にお粥を運ぶ。何も話さず黙々と食べる(食べさせる)もんだから、あっという間になくなった。
「ごちそーさま」
「う、うん」
米粒一つなくなった茶碗にびっくりする。
(美味かったってことなのだろうか……)
「悠季、」
「? なんだよって、近い!」
名前を呼ばれて茶碗から顔を上げると、額がぶつかりそうな距離に流木の顔があった。
慌ててその胸を押し返す。
心臓に悪いな! もうっ。
「……キスしてぇ」
「はぁ!?」
とんでも発言にマスク越しに顔が熱くなる。
(キスって……!)
「急に何言い出すんだよ、バカ!」
冷静になるために顔を背ける。
でも、それが悪い方向に行ってしまう。
「急じゃねーよ。……悠季」
「っ……」
横から抱き寄せられて、ちゅっとほっぺにキスされる。
掠れた声に全体的に熱を帯びてる流木の体。それでも、流されまいと膝の上のトレーをぎゅっとつかんで耐える。
(いつだったか俺にキス好きでしょ、みたいこと言ってたけど、コイツだって大概じゃん!)
「もう、やめろって! こんな嫌がらせっ」
しつこく横からキスしてくる流木を振り払ったら、とうとう床にトレーごと茶碗が落ちてしまった。
ガシャンっと言う音に一瞬沈黙が流れる。
「お、お前好きな奴たくさんいるじゃん! したいなら、呼べば「無理」」
人が必死に提案してるのにコイツはたった一言で両断しやがった。
「なんでっ、」
「お前が好きって言ってんの。バカ」
「んん……!」
両手で顔を挟まれて、マスク越しにキスされる。角度を変えながら何度も。
──嫌がらせじゃんか、絶対。これも、好きって言うのも。だって、俺なんかにそう思う理由なんてどこにもない。
(俺も嫌いだし……)
「は、ん……」
なんて思いながらも、たった一枚隔てるマスクがもどかしくて。
流木を見上げるとふっと笑われた。
「したいくせに」
そう言ってコツンと額を合わせてくる。
(ずるい……。ほんとにずるい!)
「…………流木っ……」
そんな追い詰め方に心の中で非難するけど、コイツの名前を呼んだ時には自分で、マスクを顎下にズラしていた。
「可愛い。悠季、好き」
「んぅっ」
後頭部を抱き寄せられて、上から噛みつくようにキスされる。
「は、ンんっ……ふ……」
風邪うつるかも、なんて心配する余裕もないくらい絡んでくる熱い舌に自分のを差し出す。
「んっ、んぅ……ぁっ」
「がっつくなって。逃げねぇから」
「が、がっついてなんか!」
「どーだか」
「~~っ」
また笑う流木にドキッとしてしまう。
気付いたらコイツの膝上に抱き上げられてるし、俺の腕も流木の首に回っていた。
(嫌がらせってわかってるのに、まんまとハマってしまう俺のバカ!)
「は、んん……流木……?」
「……っ」
「! え、大丈夫かよ!?」
再度重なってゆっくり舌を絡めていると流木の動きが止まって。俺にのしかかるように倒れ込んできた。
(もしかしてっ、)
その額を触ると案の定熱くて。汗もヤバいし、息も荒さが増してる。
「と、とりあえず寝かせないと!」
流木の上から退いて、ベッドに何とか寝かす。
(薬飲んだのに悪化してる……)
自業自得と思う反面、後悔が襲ってくる。
「……あ。そうだ、冷えピタ!」
千倉先生がくれた冷えピタを袋から取り出して、流木の額に貼る。
あとなんだろ……。あ、汗拭かなきゃか!
そう思ってタオルを持って来ようと立ち上がった時、下半身が湿っていることに今更気付いた。
(さ、最悪っ。俺、いっ……)
それからトイレに駆け込んで自分のソコも拭くはめになったのは言うまでもなかった……。
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