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#11
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僕は起き上がり、手探りで出口を探す。
「…嬢ちゃん
瑛影もじきにここにくるから
自分から行かなくても…」
ご主人様の手は、煩わせません。
せめて最後くらい、自分で…
自分の足で、ここから消えなければ。
やっとの思いで襖を見つけ、横にずらす。
ここに来た時の道を思い出しながら
廊下を少しずつ歩いた。
確か、ここを右に曲がって…
…あれ、ここ階段…?
ああ、そうか
僕はここから落ちて…
僕は慎重に、一歩一歩降りていく。
トンッ
どうやら、一番下の段まで降りたようだ。
壁を探して、車の音のする方へ向かう。
「嬢ちゃん、そっちは外だよ」
いいんです、柴田様。
わかってます、自分のことくらい。
迷惑になるのは
邪魔になるのは、わかってるんです。
車の音が、だんだん近くに聞こえるようになってきた。
あと少し
「…っ!」
ドサッ
僕は段差に足を取られ、転んでしまった。
「…おい、なにをして…
胡蝶!?」
「若、お帰りなさい」
「瑛影
嬢ちゃんが、瑛影のところに行きたいらしくて」
「…そうか
胡蝶、待たせたな」
大きな手が、僕を掴んで立ち上がらせた。
その手は僕の浴衣の裾を、パンパン、とはたく。
ありがとうございました、ご主人様。
短い間でしたが、お世話になりました。
僕は見えないご主人様に向かってお辞儀をすると
また手探りで
外を目指した。
「胡蝶…?
そっちは外だぞ?」
こっちであっていたんですね、よかった。
ご主人様の声が、後ろから聞こえる。
ありがとうございました、ご主人様。
さようなら
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