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#1
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嘘だろ……。
あのときの俺はこんなことになるなんて想像もしてなかった。
俺は布団に潜り、瞼を閉じる。
瞼に映るのは、あの男の顔と声…。
恥ずかしくなって思わず目を開け、溜め息をついた。
顔が火照りだし、いてもたってもいられないくらい激しい衝動に駆られそうになる。
体を返しうつ伏せになって再び溜め息をつく。
俺、国斉陽翔(こくさい はると)がこんなにも溜め息をつき、顔が火照っている理由は、しばらく前に遡る。
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「…国斉!国斉、ちょっと来い!」
担任の荒々しい声に呼ばれ、帰ろうとしていたところの俺を教卓の前に呼び出した。その教卓の上には、前回受けた俺の模試の結果表が上がっていて、担任はその表の俺の第一志望の学校名が書かれている部分を指差して言った。
「……はい…。」
「お前、ちゃんと勉強して受けろって言っただろ!勉強したのか!?」
「しましたよ…、一応…。」
「一応じゃない!合格する気があるなら、もっと勉強しろ!これは模試だからいいが、こんなんじゃ志望校受からないぞ!」
「わかってますよ…。」
「じゃあ次の模試はこんな結果は出さないだろうな?」
「……はぃ、絶対。」
「じゃあ期待しておくぞ!次の模試の目標はEランクだ!ダメだったら俺が1対1で指導してやるからな!」
あぁー…。
何言っちゃったんだ、俺は…。
帰りの電車に揺られながら窓の外を眺める俺。
手にはさっき担任から受け取った模試の結果表がある。
俺は今高校生3年生、受験生だ。
志望校は、もう2年生のときから決まっていた。
県内の公立大だ。
でも、模試の結果はその大学に行くには不可能に近い結果だった。
そのせいで、今年内にあった模試の結果を見ては毎回担任に怒られ気味である。
……これでも、俺なりに頑張ってるんだけどな…。
それを親に見せると、当然ながら担任と同じような反応をされる。
このままじゃダメだろ、もっと頑張れ、志望校変えたらどうだ、等。
そしてそれを聞いて何も言い返せなくなり、部屋に籠る。
その繰り返し。
だからいい結果が出ないんだろうな…。
そう思ってベッドでケータイを弄っていると、1階から母親が上がって部屋にやって来た。
「陽翔ー。…あんた、真矢のこと覚えてる?」
真矢…?
少し考えると、すぐに頭の中にその人の顔と声が蘇ってきた。
覚えている。
真矢というのは、母親の同級生の1人で特に仲が良く、よく家に来ていた人だ。
「…覚えてるけど、何で?」
「真矢の息子さんがね、今大学生で教育学部にいる人なんだって。」
「ふーん。…だから?」
何となく、母親の言いたいことがわかる気がする。
でも、 それがわかりたくなくて敢えてわからないふりをした。
「だから、その息子さんに勉強を教えてもらいなさいよ!」
「………はぁ?」
アホらしい言い方で言ってしまったが、内心では「やっぱり…」と思っていた。
「何で!…てか、俺もその人もお互い会ったことないじゃん。」
「いいじゃない!それに、その人あんたの行きたい大学よりも偏差値の高いところに入ったのよ?高校のときも成績よかったみたいだし、絶対そうしてもらったほうがいいわよ!」
「いやいやいや…。…それに、こっちが頼んでもそっちの事情とかあるでしょ。」
「それがね!真矢と息子さんのほうから、そうしないかって言ってくれたのよ!」
……まじすか…?
「息子さん、高校教師になりたくて教育学部に進んだらしいの。だから、あんたに教えればいい経験になるんじゃないかな?ね!いいでしょ!?」
他人に自分の勉強を見てもらうなんて少しアレだと思ったが、断る理由が見つからず、渋々OKした。
「よかったー!後で真矢に連絡しておくわね。詳しいことは、決まったらまた教えるから!」
母親は何だかすごく嬉しそうに部屋を出ていった。
━━ これが俺たちのはじまりだった…。
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