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「愁、元気ない…?大丈夫?」
「んあ?…まっさかー、超元気だよ」
昨日のイライラが朝になってもまだ残ってて、それをぶつけるようにズボンのポケットの中でギリ、と手のひらに皮膚が切れそうな位に爪を食い込ませる。
相変わらず自分以外の奴の事には勘の良い昴流が登校中に眉をハの字にして俺の顔を覗いてきて、それに昴流の頭をわしゃわしゃと撫でながら笑顔で返した。
「…やっぱりちょっと元気ない」
…まあ、こいつの前ではそんな嘘も無意味なんだけど。
「ちょっと待ってて」
「ん…?」
何故か来た道をUターンして少し前に通りすぎたコンビニに入っていってしまった。飲み物持ってなかったんだろうか。
1分くらい経って戻ってきた昴流が持ってるレジ袋にはペットボトルらしき影はない。何買ったんだこいつ。
「愁あーん」
「…あ?」
にへらと笑う昴流の手には茶色い物体。
言われるがままに口を開けるとそれを放り込まれて口の中に甘いのが広がる。
「ちょっと元気でた?」
「…ふふ、んーどうだろ。もっと食べたら元気でるかも」
「ん」
俺の言うことに健気にもまた一粒チョコレートを摘まむ昴流を見てると、モヤモヤと胸の中で渦巻いていたものが無くなっていく気がした。
時々思う。
俺が、あの時こいつを落とさなければ昴流はもっと幸せな人生を歩めたかもしれないと。
俺とは違って嘘が苦手で、誰よりも優しい。真逆の存在。
俺の存在が悪魔なら、羽の折れてない天使…とでも言おうか。
その羽を、俺はむしりとった。泣いて抵抗する昴流から無理矢理。
今更こんなこと思うなんて虫が良すぎるし、過去なんて変えられないけど、そう思うと胸が痛む。
「…元気にならない?」
嗚呼、俺の馬鹿。また不安にさせてしまった。
「そんなことないよ。ありがと昴流」
「…ん」
小さく笑って頭を撫でると、可愛らしく笑ってくれて、空になったチョコレートの箱を袋に戻してバックの中に突っ込んだ。
やっぱりお前は笑顔でいる方が似合うよ、昴流。
「愁」
「ん?…っん」
横から腕が伸びてきて頭の向きを変えられたと思えば、唇に柔らかい感触。
腕と共にそれは離れていって、次に視界が捉えたのは俺の手を握ってへらりと笑う昴流の姿。
「俺愁に会ったこと後悔してないよ。愁は初めて俺を見てくれた大切な人。…愁が居なかったらそれはもう今の俺じゃない」
「…っ、」
「だいすき」
こう言うときだけは人の心を読めるのか、俺の不安をピンポイントで当ててきて、欲しい言葉をくれる。
そんな存在は、この先幾ら探してもお前しか居ないんだと思う。
「そう、サンキュ」
こんな俺を親友だと言ってくれるお前が、俺も大好きだ。
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