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だから、これは気分だった。…といえば格好がつくのかも知れないが、結局のところ俺は自分をさらけ出せる存在が欲しかったのかもしれない。
親しい人間にも…否、親しい人達だからこそ話すことができないようなことを話せる相手が欲しかったんだ。
「連絡先教えてくれない?」
「あ…、う、うん。えっと携帯壊れてるんだっけ?」
「嗚呼、ごめんあれ嘘。あんま俺人にアドレス教えたくなくて」
「そっか。…『魔咲愁』…君?」
赤外線でアドレスを交換して、アドレス帳に表示される名前を口に出して言う。
それに俺は「糞みたいな名前でしょ」と自嘲するように言った。
「哀愁、愁殺、愁嘆、愁死…。あんま良い意味ないだろ」
「んー、でも悪い意味の言葉って魔除けって言うじゃない?」
「そんな意味でつけられてたらまだ良かったんだけどね」
生憎俺に対してそんな愛情はなかった。
「『しゅう』って漢字が大量にある中で、『愁』を選んだ。まあ、同じ『うれい』のこっちだっただけまだましだけど」
「憂鬱の『ユウ』…。これは嫌なんじゃなかったの?」
「俺がつけた名前だから良いんだよ」
別に、愁って名前単体が嫌いなんじゃない。
俺の名前は偶々良い意味を想起させない字だけど、それが良い意味だった可能性もある、『秀』とか『修』とか。
でも、例え俺の名前がそう言うのであっても、あの女が込めた思いはその漢字の意味とは真逆で、それは『お前が"こう"なることはない』って"まじない"だ。
だから、正確に言えば女がつけた名前が嫌いなんだ。
逆に言えば、女につけられた名前じゃないなら俺は嫌だとか思わないってことで、例えその名前に嫌な意味が込められてたとしても何も感じない。それが自分が考えた名前なら尚更。
だって、自分が自分をどう呼ぼうと、俺の勝手じゃん。
ちょっと意味は違ってくるけど、俺にとっては自称自宅警備員と同じレベルだ。
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