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「…本当に?」
「ほ、ほんと…っ!」
ずい、と疑い深くも俺の顔を覗いてくる涼。それにこくこくと力強く頷く。
「……そう。良かった」
「あわ…っ?!」
「そっか。魔咲、ね…」
俺が本当って目で訴えると信じてくれたらしい涼からはどす黒いのが消えて、俺を力一杯に抱き締めた。張り詰めていた空気がなくなって俺もホッとする。
「ごめんね、きつく言って。また昴流が喧嘩したと思ったらカッとなった」
「否、俺も言わなくてごめん」
「まさかお前が魔咲に怒って手出したとか考えもしなかったから…」
「あー…」
そうだな。言われてみれば確かにそうだ。俺、愁に怒って手出したの殆どねぇかも。殆どって言うか0に近い?愁と中1の頃和解してから殴ったことあったっけなぁ…って考えてしまうくらいには愁に怒ったことない。俺がそうなんだから涼だってそこには結び付かないだろう。
だから俺が怪我した=喧嘩したって思ってしまって、そんで怒った。拳に擦り傷なんて、殴らない限りなることなんてまずないし、そう思うのが自然のことだろう。
「正直その相手聞き出して殺してやろうかと思った」
「えー…。それは駄目」
「昴流も俺が短気なの知ってるだろ。あいつならまだ許すけど…、魔咲じゃねぇなら冗談抜きで今回こそそうしてた」
怖いこと言うなぁ…。また大魔王様が背後にでかかってる。
そんなに言うほど涼短気かな…?涼俺に怒ったりしないし、俺以外の相手にも怒ってるのあんまみない。否、まぁ今回みたいに俺が怪我したらめっちゃ怒るけど。
…あ、愁と真さんと臣とは良く言い合いしてるな。でも、その言い争いは心を許してる部分があるから出来ることな気がする。愁と涼って互いに同族嫌悪してるけど、何だかんだ言って完全に嫌ってないように見えるし。そうだったら愁は俺に涼と付き合うなって言いそうだし、涼だって愁と一緒にいるのは止めろっていいそうだ。…うーん、言うことも似てるな。
…やっぱり、涼が短気ってピンと来ないな。兄さんや涼の家族あたりに後で聞いてみよう。
「本当ごめん、冷静さを欠いた」
「俺気にしてない」
「…ごめんね」
「もー…」
俺の肩に額を乗せてうりうりってしてくる。これ凹んでる奴だ。普段は隠れてる耳が垂れてるのが今は見える。俺に申し訳なく思ってる涼には悪いけど可愛い。
「涼が怒ってくれたの嬉しかったから。…大事に思われてる?感じがして」
「…何でそんなこと言うの」
「え、違うの?」
「…違わないけど、大好きだけど……。もっとお前怒れよ馬鹿」
「む…、何だと…」
涼に怒る理由なんてないのに怒らないから馬鹿って言われた。何で。不服だ。これに対しては俺文句言ってやるぞ。
「もっと怒って。じゃないと俺マジでどん重たくなりそう」
「なれば良いじゃん」
「上限が分からないんだよ。誰かに溺れることも、こんなに誰かを心配することも、あるなんて思ってなかった。俺もっと淡白な方だったんだからな」
「付き合ってもすぐ振られてるもんね」
「それを言うなよ…」
余計にしゅんってしてしまった涼に笑ってしまう。これは俺を馬鹿って言った仕返しだ馬鹿。馬鹿って言った方が馬鹿なんだからな。
俺は別に涼にこれ以上重たくなるなとか、昔の涼を求めてる訳じゃない。変態で、やきもち焼きで、俺に預けられる体重よりも大きい愛を持った涼が好き。他人に最近まで無関心だった人間が、俺だけにそんな思いを向けてくれるんだ。それならもう重くたって何でも良い。
俺のことが好きだから喜怒哀楽、いろんな表情を見せてくれる。そこに不満を抱く訳がない。寧ろそれって贅沢なことだと思う。
「俺が怒るのはきっと涼が浮気したとき位だぞ」
「…それは有り得ないな」
「本当に?」
「……俺もうヤリチン卒業したってば」
「ふふ、ごめんごめん。しゅんってすんの可愛かったから」
先の意地悪の反応があまりにも可愛かったからまた意地悪してしまった。ごめんね、でもほら可愛かったから。こっちはいつもの仕返しだと思って許して。涼を疑ってる訳じゃないんだから。
「…でもあいつを殴ったなんて珍しいこともあるんだね」
「だって愁が俺頼ってくれねぇから」
「…え、怒った理由それなの?」
「…?ん」
「あー、うん…何か見えてきた。昴流らしいと言えば昴流らしいトリガーだね」
俺らしいって言っても皆そうされたら怒るもんだろ。好きな人が自分を頼ってくれずに一人でどうにかしようとしてるってショックだし腹立つんしゃないの、普通は。…あー、そうは言っても強く殴りすぎちゃったかもな。もうちょい弱めにしたら良かったかもしれない。ごめん愁。力加減を忘れてた。
「じゃあ昴流俺が昴流に頼ろうとしなかったら怒るんだ?」
「……涼も俺信じてくんねぇの」
「まさか。もしもの話だよ。…ふふ、そっか。そんな理由でも昴流は怒るのか」
どう言う訳か涼は俺が愁に怒った理由…なんてしょうもないことを知っただけだって言うのに嬉しそうに笑う。理由を尋ねるに、俺の新しい部分が見れたことが嬉しかったらしい。
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