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『あの…?えっと…もしもし?誰ですか?』
「っ、ひぁぁ、ン゛…っ?!ぁ…やめ…ッ、」
返事が返ってこなくて不審に思ったのか、聞こえてないと思ったのか。
もう1度聞こえた椿の電話の主が誰なのかを尋ねる声。
底辺をつっきて低下した思考では電話を今すぐ切ること以外にこの場から逃げる方法は思いつかず、その声にはっとなって電話を慌てて切ろうとした。
が、それに合わせて男は性器を1度抜き、奥まで一気に突いてきて、切るよりも前に聞かれてしまった喘ぎ声。
『…その声…もしかして昴流?』
何度か聞いたことがあるのだから椿は直ぐに分かってしまって、俺の名前を呼んだ。
気付かないでくれ。そんなささやかな願いは崩れ去った。
それだけで、今まで満たされていた心にぽっかりと穴が開いたような感覚が襲ってきた。
「あ、や…っ、やぁぁ…っ駄目、奥今、や…っやだ、やだ…っ!!」
『…おい、昴流。お前今何してる?』
「やだぁ…っイく、や、や…っあ、ンぁぅっ、あぁっ」
それだけじゃなくて、赤髪野郎は俺に電話を切るなんて余裕を与えさせないとでも言うかのように肌がぶつかり合う音が鳴ると同時に何度も、何度も奥を突いてきた。
嫌でもこの体じゃあ声が出てしまって、ピークが近い体はビクリ、ビクリと痙攣する。
俺の手から落ち裏向きになってベットに転がる携帯のマイクを手で押さえるけれど、それでも向こうに声は聞こえていて。椿の声が聞こえる。いつもみたいな、優しい声じゃなくて、聞いたことのない低いトーンの椿の声が。
『昴流、おい。答えろ。何してんだお前』
「や、あっ、ァンっっ、や、だ…っイきたくな…」
「…もっと聞かせてやれば?お前の、淫乱な声」
「ゃ…、あぁぁ……っ?!だめ、だめ…っ!」
聞かれたくないのに出てしまう、女みたいに感じてる声。
それにどんどん暗くなっていく椿の声。
俺の声を聞く度に、嫌われていくようだった。
それが怖かった。明日から俺を蔑む目で見るんじゃないかって。
椿も、皆と同じになっちまうんじゃないかって。
『……なぁ、昴流。答えろって言ってんだよ。お前今誰といる。先の声魔咲じゃねぇよな』
「っひ…?!!あぁぁぁっン、~っ、あ゛っ…あ…」
「うっわ、お前イったのか?普通ここでイく?」
「あ…っ?!やら…動いちゃ…あぁっ」
『~っっ!!!返事しろ昴流!!』
俺の意思とは裏腹に感じる体は奥を突かれて果ててしまった。
それを男は嘲笑し、まだ吐精していない自身の欲望でイったばかりで敏感になっている体に鞭を打つ。
自分の嬌声と、椿の怒鳴り声が入り混じる。
体は冷え切ってて、温もりなんてものはもう感じない。
あるのは強い快感だけで怖くて、逃げたくて。けれど無理で。ボロボロと涙が溢れる瞳をシーツに擦り付けた。
「…なぁ、答えてやれよ。俺は誰とでもヤれる淫乱だから、ケツに今知らない奴のちんこ突っ込まれて感じてるってよ」
「ふぇ…、んぅ…ッ、ん…ぁ…やだ、やぁ…っ」
「じゃあ、俺が伝えてやろうか」
「っ!や…っ、やめ…ぅ、あ、あっ」
男の手が携帯に伸びてきて、咄嗟にその手を振り払い、自分で握った。
きっと、何を言っても嫌われる。だって、こんなに怒ってる。
どうすれば椿がまた俺に優しい声を掛けてくれるのか。その言葉を探すも見つからない。
「椿、切って…っぁ、あっん…」
だから、だからせめて。もう聞かないで欲しかった。
これ以上嫌いにならないで欲しかった。
自分勝手な要求。俺はお前が言ったことに今まで一度も頷いたことは無いのに。自分の為に嫌わないでいてくれることを望んでる。嫌っても、皆みたいな目だけは向けないで欲しいと願ってる。
その言葉で無言になる椿。
何度か「お願い」と繰り返した後、暫く黙っていた椿は、「そうだな」と冷たく言葉をいい放って、そこで電話はブツンと切れた。
嗚呼、嫌われた。
でも、悪いのは俺。俺がセックスに依存してしまってるのが悪いんだ。
でも、本当は。期待もしてたんだ。
怒らないで、そんな暗い声を出さないで、いつもみたいに優しい声を掛けてくれるんじゃないかって。
でも、そんなことある筈がなかった。高望みし過ぎた俺は。
自己中心的。俺は自分のことしか見れていない。
自分にとって良い方向にばかり、物事が進むことを望んでるんだ。
「…っ、は…」
「ぅぁん…っ」
気付かないうちに欲を俺の中で吐き出していたそいつのが、俺の中から出て行く。
いつもならそれに不安を抱くのに、氷点下の心はそんな寒さの変化には気づかず、襲ってくることは無かった。
ーカシャー
「っや…、やだ…撮、るなぁ…っ!!」
俺の携帯からシャッター音。見ればレンズが俺を捉えていた。
先は何とも思わなかったのに、その音に恐怖を感じた。
俺の写真を俺の携帯で撮るの何て、1つしか理由が見つからなくて必死で携帯を操作する男の手から奪い返そうとした。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。
送るな。頼むから今の俺の姿だけは、椿に見られたくない。
けれど、そんな思いは無慈悲にも届くことは無く、男に突き付けられた『送信完了』の画面。
その4文字に、視界が滲んで周りが見えなくなった。
「当初の目的は果たせなかったが、まあ良い。良いものを見れたしな。悪魔に慰めでもしてもらったらどうだ?…ま、お前をどう思うかはあいつ次第だけど?」
「あ…あ…や…」
「もしそうなってくれりゃあ一石二鳥なんだが…は、ざまぁねぇな。糞狼」
俺の携帯をベットに放り投げ、見下し、嘲笑する。
こいつの勘違いでも、例え勘違いであっても、その実は成し、そして弾けた。
本来予定していたことでなくとも、目的を果たせれた、恐らく俺のとは真逆な気分であろうそいつ。
そいつは服を整えると、直ぐに部屋から姿を消した。
1人残って、部屋の中心で泣く俺。
嗚呼、もしかしたら天罰が下ったのかもしれない。
自身の心の穴を埋めるために、周りの奴を"壊し"てきた天罰が。
俺も、愁もやってきたことは似たようなもんで、今回のが俺を恨んでた奴でもおかしくは無かった。
つまり、あの男が、愁のせいでどんな思いを抱いたかは知らないが、それは”俺がした”のも同然のことってことだ。自分のことばかり考え、行動していたらいつかは足を掬われる。本当にその通りだ。
…嗚呼、でも何でなんだろう。
俺は椿のことが嫌いな筈なのに。
なのにこんなにも嫌われたことが辛い。胸が苦しくて仕方がない。
嫌わないで欲しかった。せめて皆みたいにはなって欲しくない。こんな俺を見ても好きでいて欲しかった。
…だなんて。
俺の考えてることは矛盾だらけで、第一に。本来嫌いな奴の体温を温いとか、落ち着くだとか思う訳が無いのだ。
俺が嫌ってんのに嫌いにならないで欲しいってのもおかしな話で。
自分が、理解出来なくなる程に捻じれ曲がった矛盾点。
…否、違う。
逆に考えれば、"嫌いな筈なのに"。そう思うから理解出来ないんだ。
じゃあ、俺がこう思ってしまう、この感情は?
…そんなの、幾らそういう経験がないとは言え、俺でも分かる。1つしかないだろう。
「っはは…気づいた時にはもう失恋してんのかよ…」
いつの間にか、俺はお前に惹かれていたんだ。
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