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「中学になって、部活に入るときも、俺が誘ったの。
『お前足早いし、陸上ならリレーしない限りは個人プレーだから』って。
………彼方はどんどん速くなったよ。俺なんか追い付けないくらいに。」
中学に入って彼方は成長した。
身長も伸びたし、足も速くなった。頭は元々良かった上に、顔までよければ、そりゃもうモテモテだった。
そんな彼方との距離を誰よりも俺が感じてた。
「遠くに行った気がした。俺とはレベルが違うって。
勝手に決めつけてたんだ。」
「夏の大会は?」
「え?」
「夏の県大会、一緒に走ったんやろ?」
「なんでそれ知ってるの。」
「内緒。」
久夜はいつも内緒だ。
気になることもたくさんあるのに、はぐらかされる。
久夜の内緒には、どれくらいのことが詰まってるんだろう。
「3年の夏の大会はね、俺が唯一彼方と一緒に走れた大会なんだ。
いつもブロック違うし、俺も予選通れないこと多くて。
最初で最後の俺の県大会。彼方と走った最初で最後の大会。」
「せやったんか。」
「彼方がゴールを切った時、翼が見えたんだ。
大きくて真っ白なやつが、バサーッて。
青い空にさ、入道雲より真っ白な翼。
…綺麗だった。敵わないって思った。こんなにも違ったんだって思った。」
真っ白な翼が、青空に反射してキラキラ光ってた。
思わず泣きたくなるくらいに綺麗だった。
あんなに近くにいたのに、届かなくなってしまった距離。
誰よりも悲観したのはきっと俺だった。
「その後は久夜も知っての通り。体育祭の終わったあとの秋に、無理矢理犯されて、俺は逃げるようにこの学校入ったけど、彼方もここにいたって言うオチ。
笑えるだろ。
本当、どこで間違えたんだろな。」
お互いきっと、お互いが大切だった。
だったらすれ違うこともなかったはずなのに。
…どうしてすれ違ってしまったんだろう。
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