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「シオンがこの時間に外を出歩くほうが心配だ」
ハミドとマンションを出てから、駅まで送るのを拒むので、近くの小さな公園に行き、少し話したい事があるとベンチに座ってもらった。
「今日の事なんですけど、やっぱり無かった事にしてください。俺は父さんに知られるのが嫌なんです。」
「さっき忘れたいと頑なに言っていたのも、父上の為か。」
「一人息子の俺が、父さんを幻滅させたくないです。」
ハミドは少し首を傾げて考えると、目を瞑って首を左右に振りながら断言した。
「シオンの父上は、そんな事で幻滅するような人ではない。」
「それはハミドが俺の友達だと思っているから。こんな関係、日本でオープンにするのは並大抵のことではないんです。もし父に今日の事が知れたら‥‥」
「知れたとしたら?」
「俺は死にたくなりますっ!」
勢いに任せて、絶叫したら心臓がバクバク鳴っていた。
ハミドはピシリと固まってしまい、そのあと俺に寂しそうに笑った。その顔はむしろ泣いているより悲痛な顔に見えて、俺の心に刺さった。
絞り出すように、「分かった。他に何か希望はあるか?」と聞かれ、俺が首を振ると、少し安心したように、息を吐いた。
「昨日の礼が、もう一つある。受け取ってくれるか?」と聞かれたので頷くと、小さな包みを渡された。
丁寧に包装紙を解き、箱の中を確かめると地球の形をしたネックレスだった。
「凄く綺麗だ‥」地球のヘッドを持って月の灯りに翳して見ると、地球の陸の部分がキラキラと角度によって色んな色に見える。
「手伝うから、付けている所を見せてくれないか?」
控えめに言われて、ネックレスを渡すと鎖をそっと開き、留金をしてくれた。俺の髪が一部首を覆っていて、その毛を一本も巻き込まないよう、慎重に扱ってくれる優しさが擽ったくて身体を固くして待っていた。
「出来た」
そういって満足そうなハミドの顔を見ると、双眼に俺の恥じらうような表情が映し出された。
「よく、似合っている」
俺の頬を包んで、囁かれると腰が疼いてくる。
ハミドの唇が近づいてきて、拒否しなきゃと思うのに、その熱っぽい目で見られるとどうしても断れなくて、黙って目を瞑り身を任せる。ハミドは安心したように、額から頬に軽くバードキスを落とし、やがて口にも押しつけると、あとは下唇を挟むように吸いながら、あやす様に優しいキスをしてくれた。
俺がぎゅっとハミドの背中に手を回すと、ハミドも俺の背中に手を回し、擦ってくれた。
変だけど、恋人のような関係にはなれないことをこのキスでお互いが分かり合えた気がした。
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