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「さて、そろそろ精進料理を作る頃合いか。シオン、ゲンショーとここで‥」
ハミドが腰をあげると、ゲンショーさんがそれを制した。
「あー、いい、いい。作らんでいい。」
「ゲンショー?」ハミドが首をかしげると、ゲンショーさんは「ハミィ、お前な。今日はとても獣臭いんじゃ。わしはてっきり、人でも斬り殺して、ここにきたのかと、珍しく肝を冷やしたぞぃ。」「なっ!‥そんなに酷いか?」ハミドが服をクンクン嗅ぐ仕草を見ると、確かに黒い豹が毛並みを舐める仕草に、見えない事もない。
「そうじゃないことは、すぐ解って安心したがな。さっきからお前のせいで寺のモンが落ち着かん。ハミィ、滝にでも打たれて、この部屋で少し休んでこい。」
「ん?いつもの鍵と違うが‥」
「ほうじゃの、ほうじゃったかの。場所はお前の父上とあの母上が泊まったところじゃ。」
「!?」ハミドがうって顔を、した。
何故かゲンショーさんが肩をぽんぽん叩いて、お前にもあるんだのうって気の毒そうだ。
何だろう?
「しかし、シオンに俺の手で創った精進料理を食べさせたかった。」
「そんな獣臭い手で食わすのか?」また、うって顔を、する。
「縁があればまたそんな事も出来るじゃろ。そうさな、あと二ヶ月位は俗世で生きられるように修行してこい。お前ならそんぐらいもあれば、折り合える。元々、強い子じゃからな。」
何だろう、ハミドは項垂れて、鍵を持って出て行った。
俺はゲンショーさんに、菓子を薦められる。
「俺、手土産とか何にも持ってきていないのに‥」
「いいんじゃ、いいんじゃ。この器は不思議での、菓子が減ったかと思えば増え、増えたかと思えば減るんじゃ」
えっ!?魔法?
カリフさんが困ったような顔をして「誰かが、言われるでもなく食べたり補充したりしているだけです、シオン。」
あ、そうですよね‥。
「シオン、お前は不思議な子じゃのう。お前がいると獣臭い残り香が、一気に消えて穏やかになった。」
「あの、さっきからハミドが獣臭いって‥」
「うーん、ハミィはの、周りを、巻き込む渦のようなものじゃ。ハミィの軸が歪むと、この世が歪む。」
は‥?
カリフさんを見ると、彼でも通訳できなそう。
「ハミィが乾きを訴えれば、この地面にヒビが入るんじゃ。」
‥?カリフさんっ、なんか目がトローンとしてる。
‥あれっガクッと。
「あっ、これは失礼を‥」
と、カリフさんは目をシパシパしている。
「カリフも、気を張っていたんじゃのう、隣に部屋があるから、少し横になってはどうしゃ?」
あっ、説法を聞いて眠くなっちゃう感じか‥。
カリフさんは俺を見たけど、気にしないでって俺は言った。軽く頭を下げて、隣の、部屋に消えた。
思えばカリフさんだって疲れているんだ。
ゲンショーさんは俺に向き直ると、「ハミィに何かあったのかと心配になったが、シオンがいれば大丈夫じゃのぉ。あやつは一度乾きを持つと、周りを、焦土にしかねない子なんじゃ。じゃから、いつまでも穏やかにいられるよう、シオンが助けてあげられるか?」
「俺‥‥が?」
うんうん頷いて、「わしはのぅ、シオン。男も女も、一人でも、今まで一度もしていないことが、ある。三大欲というてな。じゃから、ハミィの悩みは聞いてやれん。」
「え‥さんだい、よく?」
やばい、俺もすっげぇ眠くなってくる。
「あれでは精進料理など、作らせてはやれん。
ハミィの、気持ちの入っていない手作りの料理等、材料にも、シオンにも、悪いじゃろう?」
ハミドって、料理出来るんですか?って、重い瞼を必死にあげながら、聴く。あれ?ハミドって家事してるの、見たこと無いよなと思って‥
「料理どころか、ハミィは理を測る、そういう子じゃ‥。おや、シオンも疲れたのか?そうじゃ、可愛い浴衣があったの、あれをやろう。それ着て眠るといい。部屋は‥」
ゲンショーさんの声がなんだか遠くて、お弟子さんに浴衣を着せて貰い、案内して貰った離れのお部屋まで自分で歩いて、もう眠すぎてギブっ!と襖を開けるとお布団があったので、そこにダイブ!! あー幸せ過ぎると布団にスリスリ。
頬ずりするとフワフワの感触。
そこで、スヤスヤ眠ってしまった。
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