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俺の家はたしかに裕福で、学校での生活費くらいのお金でうちの家計がどうこうなることはないだろう。
(たとえこの学校がかなりの金持ち校で、何かとお金がかかるとしても。)
でも俺は、散々わがままを言って迷惑をかけてしまった自覚があって。
…中学のとき、心配する両親に無理を言って学校のそばに部屋を借りてもらったり、
せっかく中高一貫の学校に入ったのに他の高校を受験したり。
だからできるだけ、これ以上の迷惑をかけたくなかった。
いきなり家に帰って来た俺を心配することは、きっと言ってもやめてくれないだろうから、
少しでも、迷惑をかけないように高校生活を送りたいと思ったのだ。今だってそれは変わらない。
だから俺は、その"食堂タダ"という甘い話に乗ってランキングの表彰式にもちゃんと出席。
うおー、という割れるような声援に応え、
にっこりと笑い、手を振り続けた。
顔が引き攣っていた気がしないでもないけれど、
逃げださなかっただけよかったと思って欲しい。
……あぁ、話がそれてしまった。
俺は意識を現実に戻し、腕の中のプリントを抱え直す。
そして、「僕に大切なお話でも?」と園田彰を見つめた。
「まぁ、簡単に言えば、そういうこと。」
くどいくらいに区切り区切り、園田彰はゆっくりとそう言った。
その顔は、口元が弧を描いてはいるがひんやりとしていて。
…あぁそうか。目が、笑っていないんだ。
そんな彼に、
「雪を一人にさせることなんかできません。」
蘭がハッキリとそう告げる。
びっくりした俺は、思わず隣にいる蘭の横顔を見た。
その目は真っ直ぐ園田彰の方を向いていて、敵意さえ感じられるほど強い。
「君は?」
「如月蘭です。」
「あぁ、別にそんなことを聞いてるんじゃなくて。
雪の、何?」
じとり。
そんな表現が似合うような目だ。
この場の雰囲気はぴりっぴりとしている。
「親友ですけど。」
蘭がそう即答してくれて、俺は心の奥がじん、とした。
俺らのこの関係は、一方通行じゃないんだなって。
「シンユウ…ねぇ。」
蘭の言ったことを繰り返すように、
少し蔑むような感情さえ見せるように、
園田彰は呟く。
あぁ、今すぐここから逃げて、しまいたい。
いや、
消えて、しまいたい。
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