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「…ずな……薺!」
「えっ!?」
「何度も呼んでるんだけど…どうした?」
「何か…見惚れてた」
「…因みに何に?」
「え、紫波さんのテニスに」
「あーうん、そっちね」
ボソボソと何かを呟いている咲夜に首を傾げるが、当の本人は「何でもないから気にすんな」と苦笑いを浮かべながら言った。
それを言われたら蒸し返す必要もないかと思い再びコートを見る。
その内に打ち合いが終わっていたらしく、紫波さんは仲間達と談笑していた。
その姿を見て、何故か悔しく思う。
どうして一番最初に仲良くなった俺じゃなくてそいつらと仲良くしてるの?
それが、どうしようもなく"悔しい"。
そう思った瞬間、自分が汚ない存在に思えた。
別に紫波さんとは知り合い程度の関係だ。それなのに、"自分は特別"だと思ってしまうなんて…バカみたい。
その気持ちを振り払うように彼らから視線を逸らす。本当は一緒に自主練しようと思っていたけど、何だかこんな気持ちのままじゃダメな気がする。
もう一度部室に帰ろうかと後ろを振り向こうとした時、「白崎君!」と紫波さんに呼ばれた。
「……紫波さん」
「おはよう。練習に来たの?」
「あ、いや…」
「ん?」
「…何でもないです。俺ちょっと部室に戻ります。代わりに咲夜を置いて行くんで」
「ちょっ、薺っ」
咲夜に呼び止められたが、今は1秒でも早く紫波さんから離れたかった。
この何とも言えないモヤモヤとした感情を見せたくない…何故かそう思ったのだ。
紫波さんの返事を聞かずにその場を走って去る。もしかしたら変に思われたかもしれないけど、今の俺にはそこまで気が回らなかった。
部室に戻って来た俺に仲間達がどうした?って聞いてきたけど、体力温存と言えば納得したように頷かれた。
練習が始まるまで後10分…それまでにこの何とも言えない気持ちを処理しないと…。
俺は1人輪から外れて、持ってきていた音楽プレイヤーで音楽を聴いて気を落ち着かせた…。
紫波さんのコーチの指導の下、練習が始まった。ウォーミングアップを終わらせてから、取り敢えず打ち合いしてと言われたから半々に分かれて打ち合う。
でも、俺はいつも通りの打ち合いが出来ない。普段ならバックアウトやネットに引っかかることが少ないのに、今日はどうも調子がおかしい。
分かってる、これは精神的に来るもので何を引き摺っているのかも…。
でも、何故か分からない。何で紫波さんのことで引き摺るのか…上手く切り替えが出来ない自分が嫌になる。
「…白崎、何か調子悪い?」
「ははっ、そーみたい…でも、偶にあるだろ?今日はダメだなーって日」
「まぁな。でも、試合までに調整しないとな」
同級生と少し話しながら落ち着かせる。そこでふと思った。
…さっき紫波さんから、下の名前で呼ばれなかったよな…?
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