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別に何かって訳じゃないけど、そう言えば呼ばれなかったなーって思う程度。
それだけの筈なのに、それを考え出したらモヤモヤするけどスッキリもした。
自分でもこの表裏の感情に戸惑いを隠せない。モヤモヤとスッキリって…一体どっちなんだと自分にツッコミたくなる。
打ち合いが終わるとまずは後衛練習からすることになった。硬式テニスの場合、ダブルスの時に前衛後衛は関係なく、その都度臨機応変に動く。
俺は中学の時は軟式テニスだったから高校に入ってから硬式テニスをやり出して、そこが軟式との一番の違いだと思った。
後衛練習は、紫波さんがクロスから出したボールをストレートに返すもの、逆にストレートから出したボールをクロスに打ち返すものだ。
俺は中学の時に後衛(背が低いと言う理由で)だったから、そのくらいはお手の物。
しかし、今日の俺は違う。ラリーでも失敗してたんだからこの練習も上手く行く筈がなくて…。
「…白崎君!ちゃんとボールとの距離を見て!そのくらい1年生でも出来るよ!」
「はいっ!すみません!」
紫波さんに説教を喰らった。他の奴らは際どいラインまで球が行かなくても打ち返すことは出来ている。でも俺は、ボールとの距離が近過ぎたり遠かったりしてネットにかけることが多い。
ダメだ…折角紫波さんに教えて貰ってるのに、これじゃ幻滅されてしまうっ。
落ち着かなきゃいけないのに、俺はどんどん焦ってしまう。
他の奴らも俺らしくないミスにどうしたんだ?って顔をしながら見ている。
…どうしよう…たったあんだけのことなのに思うようなプレーが出来ないなんて…っ。
その時、コートに立ち尽くすしかない俺に声を掛けてくれたのは…。
「…白崎君、おいで」
向かい側のコートにいる紫波さんだった。
紫波さんは俺にそう言うと、「少しの間誰か球出し代わってくれる?」と皆に聞き、部長が名乗り出た。
部長と交代した紫波さんは、俺の方を見てこっちに来るように目で合図して来た。俺はそれに素直に従って紫波さんの元へ行く。
俺達は練習の邪魔にならないように一度フェンスの外に出る。紫波さんがフェンスに凭れるように身体を預けると、ジッと俺の目を見た。
「…で、何かあったの?」
「えっ?」
「最初はただ単純に調子が乗らないのかな?って思ったけど、そうじゃないよね?何か気になることがあって集中出来てないんじゃない?」
驚いた。まさに紫波さんの言葉通りだったから。俺は余りにもその的を当てた答えに声が出なかった。
…でも、その根底が紫波さんのことだとは言えない…よな?
自分以外と仲良く練習してる姿にモヤモヤして、名前で呼んで貰えなかったことを気にしてるなんて…ガキの考え方で、恥ずかしくて言える筈がない。
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