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翌日、朝からの練習は昨日と一緒…なのに、どうも気分が上がらないのはきっと気のせいだ。
気分が上がらないと言っても、昨日みたいにミスが多い訳じゃない。
ただ単純に、やる気が出ないだけ。
その理由を知ろうとは思わない。知ってしまったら最後、取り返しのつかないことになりそうだからだ。
その日は日が落ちる前まで練習をして、咲夜と一緒に夕ご飯を食べて家に帰る。休みの1日練習だと基本こんなもんだ。
咲夜はいつも「金欠でヤバイからバイトしたい」と言ってるけど、昼にやるバイトは出来る筈がないし、夜は身体を休ませたいから無理だとも言っている。
そんな中でも俺がバイトを続けられるのは、きっとバイト先の人達がいい人ばかりだからだろう。
ゴールデンウィーク最終日。やっとこの日が来た。今日も1日練習だけど、これが終わればバイト先に行ける。
今日の朝は咲夜に会わなかったから1人で学校へと向かった。
「おはようございます」
部室のドアを開ければ所々から「おはよう」「おはようございます」の言葉が返ってくる。咲夜はまだか…と思っていたら、後ろでジャリと靴が擦れる音がして思わず振り返った。
「おはよう、皆」
「おはようございます!紫波さん」
「紫波さん、今日は紫波さんのプレーを見せてくださいよ!」
そこにいたのは紫波さんで、部室にいた奴らが楽しそうに話し掛けていた。俺は何とも居た堪れない気持ちになって、鞄を置いてラケットを取り出してから外に出ようとした。
「あ、白崎君」
「…っはい?」
「一緒に自主練する?」
「えっ?」
「俺は昨日やってないから鈍ってるかもしれないからさ…白崎君、ラケット持ってるから自主練するのかなー?って思ったけど…違った?」
黒い瞳がギラリと光った気がした。まるで、俺を逃さないと…俺の全てを見抜いてそうで怖い。
自然に視線を逸らしてから…。
「…いえ、少し壁打ちをしたいだけなので…他の奴らを誘ってやってください」
最後まで言い切ってから目は合わせずに紫波さんを見ながら笑った。そして、やっと外に出ることが出来た。
いつも使ってる壁は部室からは丁度見えない死角だから、わざわざ壁打ち以外で来る奴はいない。
一応ボールを1球持ってその場所まで行ったけど、やる気にならず壁に凭れるようにして足を伸ばして座り込んだ。
「…早く、誰でもいいから…っ」
伸ばしていた足を曲げて身体に寄せる。
あの人が来てから俺の心は荒れている。何で俺なんかに構うのか…何度も何度もそう思う。
お願いだから…綺麗な黒い瞳で俺を見ないで。汚い俺なんか見て幻滅されたくないから。
…いや、一層の事、穢らわしい俺を見て幻滅させればいいのか…そうすれば、誰も俺に構うことは無くなるのか…。
どんどん冷えていく心に、俺の思考は悪い方向に向いていた。
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