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紫波さんへの想いを認めてからと言うもの、自分でも自覚するくらい一喜一憂してる。
部活の時に彼を見れるだけで胸が高鳴って、彼と話せるだけでドキドキが止まらない。
自分的には分かりやすいと思ってるから、本人や周りにバレないかヒヤヒヤする時も。
でも逆に、俺じゃない誰かと楽しそうに話しているのを見ると、そんな楽しそうに話さないで…俺を見てよ…。
そんな思いがふつふつと募り、醜い感情が露わになる。
でも俺にはそんな資格はない。
紫波さんは臨時のコーチ…俺の恋人ではないから何かを言えるわけない。
自分の中で複雑に絡み合う感情が上手く処理しきれない俺は、相変わらず不規則な生活をしている。
好きでいることを許してほしいと請うたが、"好き"と言う感情を消したいと、矛盾した気持ちも膨れ上がっている。
部活をして、バイトをして、そして、気持ちを誤魔化すようにお客さんと肌を重ねる。
でも今は、その行為をする度にどんどん黒いシミで汚れている気分になる。
おかしいよな、元から汚れているのに…。
「薺、放課後付き合え」
そんなどうしようもない感情に参っていた俺に、咲夜が真面目な表情でそう言ったのは彼への想いを自覚した1週間後。
そうは言われても、放課後は部活があるしその後はバイトだ。
悪いけど、咲夜に付き合う時間はない。
「無理。部活の後は行くとこあるから」
「だったら今から付き合え」
「今からって…部活はどうすんだよ」
「休む」
「…咲夜らしくないぞ」
堂々と部活をサボろうと言っている咲夜はいつもの咲夜らしくない。
仕事が彼女ならぬ、部活が彼女の咲夜にとって優先順位が変わったことはないのだから。
6限が終わって後はSHRが残っている今、クラスには全員いる。そこでまさかの発言に、俺達の近くにいた奴らはチラチラと見てくる。
「もう俺は待ったんだよ。待ったけど何も変わらなかった」
「…咲夜?」
「お前は口出されることを嫌っていると分かってるから今まで何も言わなかったけど…」
椅子に座る俺の前に立っている咲夜が、机に両手を付いて前に乗り出す。
滅多に見ない表情にコッチが竦む。
「…もう我慢できない。俺だって薺のことが大切だから」
「さく、や…」
なんでお前がそんな顔すんだよ…。
真面目だった表情が今は哀しそうな…寂しそうな…眉間に皺を寄せて浮かべている。
…咲夜は、俺の秘めた感情に気付いているのか?
いや、気付く筈がない。だって誰だって考え付かないだろう?
…友達が同性に恋愛感情を抱いているなんて…。
俺達の間だけに漂う不自然な空気は、担任が教室にやって来るまで続いた。
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