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「…俺はお前のことを心配するまでの存在じゃないってことか?」
「何言ってんだよ。俺は大丈夫だから心配する必要がないってことだよ」
「…薺、俺達の関係っていつからだよ」
「はぁ?急にどうしたんだよ…中学からだけど?」
何故そんなことを聞いてくるか分からない。
咲夜の意図が読めなくてモヤモヤしていたら、鋭い視線を俺に向けてきた。
「5年だ!薺と出会ってから5年も経てばお前のことを分かるようになったと思う!出逢った時の薺が変わっちまったこともな!」
「っ、咲夜…」
今まで触れられてこなかった話題を突然出されたら怯んでしまうのは仕方がない。
でも、それとこれは別問題。
だから、俺はこれから言う言葉で咲夜を傷付けてしまうかもしれないけど、俺が俺でいられるようにするには必要なことだと言い聞かせた。
「…5年なんて時間で何が分かるんだよ」
「えっ?」
「咲夜さっき、"分かるようになったと思う"って言ったけどさ、"思う"ってことは自信ないってことだろ?」
「…何が言いたいんだよ」
「付き合いに時間は関係ないってこと。出逢って間もなくても信頼を築けることもあれば、どれだけの時間を掛けても信頼を築けないことだってある」
「…それは、俺達の場合は後者だって言いたいのか?」
「そう言うことにはなりたくない。ただ、人1人を分かりきることは無理なんだと思うってこと」
そこまで話してジュースを飲んだ。
今の話を咲夜はどう思ったのだろう?
前を見ることができなくて顔を俯かせたまま少しずつポテトを食べる。
俺が俺でいるため…そう思っていても、罪悪感は募るもの。
一体俺はどうしたいんだ…それすらも分からなくなっていた。
「…薺、お前にとって俺はどう言う存在?」
少しの沈黙の後、最初に質問されたことをポツリと小さく聞かれた。
「…信頼したい友達」
「…そうか…うん、分かった」
そう言いながら頷く咲夜は、一体どう思っているのだろう…信頼"してる"じゃなくて信頼"したい"と言ったことに対して…。
何を言われるのかビクビクしていたら、「フッ、何でそんなビクビクしてんだよ」と頭を撫でられながら言われた。
「…だって…」
「薺は信頼"したい"って言ってくれた…今はそれで充分だ」
「何で…」
「何でって…お前にとって俺は信頼できる奴ってことだろ?安心しろ、ちゃんと信頼"させて"やるから」
笑いながら自信に満ちた表情で言うもんだから、俺は思わず笑ってしまった。
…うん、信頼"してみよう"かな?1人で生きていくには変わりないけど、咲夜なら信じてみてもいいのかもしれない。
「…ところでさ薺」
「ん?」
「…結局のとこはどうなんだ?」
「…何が?」
「紫波さんだよ、お前あの人のこと…」
「咲夜」
それ以上言うなと言うように強めの口調で話を遮った。
…やっぱりバレていたか…。
「それ以上は言わないでくれ」
「…分かったよ、けど、俺はいつでもお前の味方だからな。それだけは忘れんな」
「…ん、ありがとう」
叶うはずのない恋を応援してくれる人がいる…偏見を持たずに味方だと言ってくれるコイツを信頼して行きたい、そう思った。
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