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その言葉の意味が理解出来なくて困惑する。
紫波さんの…名前…?
今も尚降り続ける雨で熱は奪われていくのに、掴まれた肩は熱い。
紫波さんは濡れた前髪を搔き上げてから続けて話す。
「"桔梗"の花言葉は"変わらぬ愛"」
「変わらぬ…愛…」
「そう…だから、薺君に俺の名前をあげる」
そう言って、まるで愛おしい者を見つめるような眼差しに泣きそうになった。
桔梗の花言葉…それは、俺が求め続けたモノそのもの。
どうしよう…運命だと思ってしまう…。
縋ってしまいたい…堕ちてしまいたい…貴方の"花"に…。
けれど、その度に思い出すのは"あの日"言われた言葉。
『…天使の面を被った悪魔…その通りね』
あの言葉が俺にいつまでも付き纏う。
その眼差しから逃げるように顔を背けようとした。けれど、「逃るな!」の言葉に固まった。
「薺君が過去に何があったのかも、何故自分を悲観するのかも、男とヤるのかも…俺には分からないし無理に説明しなくてもいい」
「…何で、貴方はそんなに優しいんですか?」
溢れ出しそうな感情の所為で口元を震えさせながら聞いた。
その質問に対して、キラキラと輝いている笑顔で一言、言い放った。
「そんなの、薺君のことが好きだからに決まってるだろ」
我慢していた涙はその言葉によってストッパーが外れたように溢れ流れた。
嗚咽が出る程の泣き方に、紫波さんが驚いていたけど苦笑いに変わると優しく抱き寄せられた。
「ふぇっ、お、俺っ…貴方に、たくさんウソ吐いたっ」
「うん、分かってる。聞かれたくなかったことだもんね」
「それ、に…まだ言えないこともあるし…っ」
「言ったでしょ?無理に話さなくていいって。薺君が話したくなったらでいいから」
「っひっく…おれ、おれっ…!」
「薺君、無理に自分を作らなくていい。本当の君を俺には見せてよ」
泣きながら話すことに一つ一つ返してくれる。
話しやすいように抱き締めながら頭を撫ででくれる。
そして、本当の"僕"でいいと言ってくれる。
……あぁ、もう…逃げられない。いや、逃げたくない。
紫波さんの胸元に埋めていた顔を上げて、久々に自然な笑みを浮かべながら言った。
「"僕"もっ、紫波さんのことが好きですっ、大好きです!」
言えないと思っていた気持ちがやっと言えた…と思ったら、後頭部を引き寄せられ唇に熱を感じた。
驚いて目を見開いていたら紫波さんとガッツリ目が合って恥ずかしくなった。
でもそれ以上に、幸せだと思った。
まだ、自分が幸せを願っていいのか分からないけど、今を大切にしたいと思う。
こんな僕に"変わらぬ愛"を捧げると言ってくれた彼と共に…。
降り続ける雨の中、冷えた身体を温めてくれたのは紫波さんの熱だった…。
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