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言ってしまえば、将来のことを考えたら一緒にいるべきではない。
紫波さんは、元はノーマルだ。きっといつか、僕なんかじゃなくて綺麗な女性と結婚して家庭を持つだろう。
さっきは勢い余って言ったが、あながち間違いじゃない。
紫波さんの持つ感情は"まやかし"だ。今は気付かなくてもその内理解するだろう。
その時、僕の存在がいらなくなるけど優しい彼のことだ、どうすれば傷付けないように別れを切り出すか迷うだろう。
その時には、僕から言えばいいんだ。
僕なんかのために傷付かなくていいから…。
考えれば考えるほど負のループに嵌っていく。けれど、それが"負"だとは気付かない自分がいる。
終わりのある…期限のある恋愛。
それでもいいんだ、例え傷付くことになっても今が"幸せ"だと思えるなら…。
幸せになる資格はないと分かってるから、だから、今だけでいいから…彼と過ごす時間だけは幸せを感じたい。
そして、その気持ちを彼に悟られないようにしなければ…シャワーから出るお湯を手に溜めてから顔を洗う。
「…大丈夫、隠し通してみせる」
気合を入れるように一度頬をパチンと叩いた。
そして、何度も何度も大丈夫と言い聞かせる。
「…あ、そう言えば服がなかった…」
バスタオルで身体を拭って、着替えようと思い服に手を伸ばしたが、これは濡れていてとてももう一度着る勇気はない。
確か、ベッドの上に寝間着として着る浴衣があったが、持ってくるのを忘れたらしい。
……紫波さんに取って貰うしかないな…。
腰にタオルを巻いて下半身を隠し、ついでに肩にタオルを掛けて胸元に散らばるキスマークを隠しドアを開けて顔だけ外に出した。
「…あの、紫波さん…っていない?」
キョロキョロと辺りを見回すが紫波さんの姿はなかった。
何で?やっぱり男は無理だと思って僕を置いて行ったの?
覚悟はしてたことだったけど、余りにも早い展開に思考が追いつかない。
…やっぱり、僕なんかを愛してくれる人なんていないんだ。
それでも哀しみは訪れない。それ以上に諦めが占めているからだ。
「…バカみたい…」
そう小さく呟いた時、ガチャと音が鳴った。
ハッと思いドアを見れば、コンビニの袋を持った紫波さんの姿が目に入った。
「…あ、出てたんだね…って、どうしたの!?」
「…えっ?」
慌てた様子で部屋に入るとコンビニ袋をベッドに捨てるように置くと、僕と目線を合わせて頭を撫でた。
「泣いてるけど…自覚ない?」
「…泣いてる…?」
言われて顔を触ると、頬が湿っていた。
あれ?何で泣いてるんだろう…?それがよく分からなかったけど、無意識に紫波さんに聞いていた。
「…男は無理だと思われたかと、思った」
「えっ?ちょっと待って!今はコンビニに下着を買いに行ってたんだよ。ほら」
コンビニ袋の中身を見せながら言われて、ホッと息を吐いた。
そんな僕の姿を見た紫波さんは、「俺も入ってくるから、出て来たらまずは話し合いだね」と言って俺に下着と浴衣を渡して浴室に入って行った。
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