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2人の荒い息遣いが部屋に響く。心地いい程の冷房も今では暑く感じてしまう。
僕の上で馬乗りになっているキョウ君は、呼吸が整うまでそのままの状態でいた。
少しして、ベッド横のサイドチェストの上にあるティッシュを数枚取って僕の身体をザッと拭った。
「ふぅ…こんなに息が上がったの初めてだよ」
「僕も…なんか、訳が分からなくなるぐらい気持ち良くなれたの初めて」
「ふふっ、お互いの"初めて"貰っちゃったね」
「…いつか、本当の"初めて"も貰ってくれる?」
「当たり前でしょ?ちゃんと"こっち"の初めても俺が貰うから」
お尻の穴の近くをスッと撫でられるように触られた。そして、笑いながら面白おかしいことを言うキョウ君に僕も笑った。
きっと考えられないほど気持ちよくなれたのは、相手のことを心から想っているからだろう。
気持ちがあるかないかでは、大きく違ってくるのだと分かった瞬間だ。
お互い汗や体液に塗れているから、シャワーを浴びることにした。
キョウ君は一緒に浴びた方が早く済むと言ったけど、何だか気恥ずかしくなって丁寧に断った。
僕、キョウ君の順番に入ってから、昨日クリーニングに出しておいた服をフロントに電話して持ってきて貰った。
そうこうしていると、チェックアウトの時間が迫っていて僕達は急いでホテルを後にした。
「…これからどうする?」
「…僕、家には友達の家で過ごすと言ってあるので…何処かで時間を潰すよ」
「その言い方だと、1人でってことかな?」
「えっ、うん…だからキョウ君は大学行ってきてよ」
昨日とは打って変わっての晴天の空の下、僕達はホテルの前で話す。
こうしてみると、昨日の佐合さんと同じシチュエーションだな…何て、どうでもいい事が頭を過ぎった。
そんなことを考えていたら、隣で溜息を吐く音がして顔を向ける。
「ナズ、俺言ったよね?今日はナズと一緒にいたいから大学は休むって」
「……うん」
「俺はナズといたい…ナズは?」
「僕、は……僕も、キョウ君と一緒ににいたい」
「うん、そうしよう……ねぇ、薺。少しずつでいいから自分の気持ちを俺に伝えられるようにしよう」
頭をポンポンと撫でられながら言われた。
その言葉は昨夜言われた"甘えていいよ"と同じに思える。
他の人には触られる行為が苦手な筈なのに、キョウ君だけは初めから大丈夫だった。
それはもしかしたら、無意識にこの人なら信じても大丈夫かもしれないと思っていたからかもしれない。
「…うん、それまで待っててくれる?」
「いつまでも待つし、それからも一緒にいるからね」
「ははっ、キョウ君が言うと自信が持てるよ」
彼の言葉1つで自信が持てる。
彼の言葉1つで勇気が持てる。
キョウ君は不思議だ。今まで僕が諦めていた事がいつか果たせる時が来るんじゃないかって思わせてくれるんだから。
晴れやかな気持ちでキョウ君の顔を見上げて、もう一度、心からの笑顔を彼に送った…。
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