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「…キョウ君、何飲む?」
「んーあんまり酒のこと分からないんだよね…ナナのおまかせはアリ?」
「いいよ。甘めかさっぱり系、どっちがいい?」
「さっぱり目で。あ、酒は強いから度数が高くても大丈夫」
「そうなんだ。じゃあ……ジンをベースにしたギムレットなんかどう?」
「ナナのオススメなら何でも飲むよ」
「ん、頼んでくるね」
その場を離れて僕は、ミキさんにギムレットを作って貰うように頼んだ。
この店でバーテンダーの仕事ができるのは、バイト以外の正社員達。今日なら、ミキさんとウメさんだ。
その足で裏に向かい、お酒のつまみとして簡単なフルーツの盛り合わせを作る。
できあがったソレを持ち、ミキさんからはカクテルグラスに注がれたギムレットを受け取りキョウ君の元へ戻った。
「お待たせいたしました。ギムレットとフルーツの盛り合わせです」
「あれ?こっちは頼んでないよ?」
「今日は僕の奢り。だから気にしないで」
僕のバイト姿を見たいとか僕はキョウ君のモノと言う牽制をするためとか…全ての理由の根源は僕にあるのだから、お礼代わりの意を込めて差し出す。
それに対して「…ん、有り難く奢られます」と微笑みながらグラスを持ち上げて言われた。
ここで遠慮されると収拾がつかなくなると思ったのだろう。
「…ナナちゃん!このカクテルを彼方のお客様に持って行って」
「あ、はい!ごめんキョウ君…」
「謝らなくていいよ。仕事なんだし…俺はここでナナの可愛い姿をつまみに飲んでるから」
「フルーツをおつまみに飲んでください。じゃあまた後で」
エロオヤジか!とツッコミたくなる気持ちを抑えてその場を離れた。
今日は平日の夜で明日も平日だから、人はそこまでいない。
これが金曜日や土曜日だったらもうてんわやんわなんだけどね。
それでも、つまみのオーダーが入ればハクちゃんと僕で作らなきゃいけないし、他の席のお客さんの相手もしなきゃいけない。
大変だけど、やり甲斐を感じているから苦ではない。
「ねぇなーちゃん。さっきの人とはどう言う関係?」
「へ?さっきの人って…」
「ギムレットを頼んだ爽やかイケメンだよ!久々にいい男見ちゃったね…一晩ぐらい相手してくれないかな?」
「ダメ!!絶対にあの人だけはダメだから!」
裏でハクちゃんと2人、作業をしていたら突然言われたから全力で拒否する。ハクちゃんがニヤニヤとしていることに気付かずに…。
「ふはっ、嘘嘘。最近なーちゃんが変わったのはあの人が理由かな?」
その言葉に顔が熱くなり作業に集中できない。
僕が何も言わずにいたが、赤くなった顔を隠し切ることができずに"特別"な人だと悟られることになった。
「良かったね、誰かの1番になることができて」
その言葉に鼻の奥がツーンとしたから、一つ頷くことしかできなかった。
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