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隣で頭を下げるキョウ君は何か言われるまで頭を上げる気がないのか、その体制をキープしている。
どのくらいの時間、沈黙が続いたかは定かではない。
自分が思っている以上に時間が過ぎていたかもしれないし、数秒だったかもしれない。
でも、一番始めに口を開いたのは予想していなかった人だった。
「…桔梗、一緒に生きていくって、口にするほど簡単じゃねぇ」
「兄さん…」
その言葉にキョウ君が頭を上げる。
沈黙を破ったのは意外にも蓮さん。よく考えれば、キョウ君の決意を一番分かるのは同じ決意をした蓮さんなのかもしれない。
僕達兄弟はそんな2人を静かに見守ることにした。
「男女の恋愛でもそれを簡単に口にしちゃいけねぇんだよ。その人のことが大切なら尚更な。自分の人生だけでも一杯一杯なのに、他人の人生も背負わなきゃならねぇのは大変なことだぞ」
「…それでも兄さんは、棗さんと一緒にいることを決めたんでしょ?」
「まぁな…だからこそ、お前の気持ちは痛いほど分かるし反対する気もない。ただ俺が言いたいのは…それを口にするならそれ相応の覚悟をしろってことだ」
最後、不敵に笑う蓮さんを見て、その姿は何処となくキョウ君に似ているような気がした。
蓮さんをジッと見ていたキョウ君の表情もまた、不敵に笑った。
「…覚悟なんて薺を手に入れた時から…いや、薺を好きになって手に入れたいと思った時から出来てるよ」
「ふはっ、それでこそ俺の弟だな」
そう言った蓮さんが徐に立ち上がると、キョウ君に近付き頭をポンポンと撫でる。
チラッと蓮さんを見れば、その表情に、瞳に慈愛が込められていた。
…キョウ君を心から大切に思っているんだな…そう誰もが感じるだろう。
「…お前は俺達家族の中で、誰よりも幸せになれ」
「何言ってるの、皆幸せになればいいんだよ」
「……そうだな…でも、家族皆がそう思っていることは覚えておいてくれ」
「…ん、ありがとう」
…何だろう、この2人の会話に違和感を覚えるのは…。
キョウ君が末っ子だからなのか…はたまた、別に何か理由があるのか…。
キョウ君の過去に何かあったのかは分かるけど、その内容はまだ知らない。
知りたいけど今すぐ知りたいとは思わない。
キョウ君が言ったように、僕達のペースで進んで行けばいいのだから、なにも焦る必要はない。
「…桔梗君」
「はい?」
「俺達も応援してるから…薺のこと、よろしくお願いします」
キョウ君に頭を下げる兄ちゃんと柊の姿に、これからはキョウ君だけではなく兄弟にも甘えていこうと思った。
「…もちろんです。今度は俺が薺を守っていきます」
キョウ君の決意の言葉の後、僕達は顔を見合わせて笑い合ったのだった…。
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