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誘うかどうか迷っている…諦めかけていると、咲夜が「…そう言えば、花火大会があったな」と後輩達の話を聞いていたのか、僕にそう言った。
それに対して「うん…そうだな」と返す。
「何だよ、テンション低いな。薺はあの人と行かねぇの?」
「んー行きたいけど、この時期は忙しいって言ってたから誘うのもな…」
なんか悪いし、と続けて言えば「大学生って大変だな」とポツリ呟かれた。
キョウ君と一緒に居たいとは思うけど、邪魔をしてまでとは思わなくて。
はぁーともう一度、無意識に溜息を吐いていたら咲夜に頭をポンポンと撫でられる。
「まぁ、誘われてもあの人なら喜んで誘われてくれると思うけど」
「俺もそう思うけど…だからこそ、無理して欲しくないんだよ」
キョウ君にとって僕の存在が大切なことは分かっている…自意識過剰じゃないけどそれは分かっていることだ。
僕の為なら多少の無理はするだろう。だからこそ、僕がセーブしないとキョウに無理をさせてしまう。
「健気だな…見てるこっちが泣けるぐらいだよ」
「泣く気ないくせに」
「俺そこまで涙脆くないからな」
言葉と表情がマッチしない咲夜に溜息を吐いた。
よく周りから健気とか言われるけど、そうやって気を回すことの何が健気なのかイマイチ分からない。
そう言えば、「分からないなら分からないままでいいんじゃねぇ?」と答えられたらそれ以上何も聞けなかった。
そうこうしている内に着替え終わりパラパラと部室から人が出て行く。
僕達も帰る準備が出来たから、荷物を持ち部室を後にした。
「あー夕方になっても暑いな」
「ね。明日からは昼間から練習だから嫌になるよ」
「折角早く学校が終わるのにな。それに、紫波さんも忙しいなら来れないだろ?」
「うん…ちょっと無理だって言ってた」
つい先日、会えない日は夜に電話をしていてその時に「8月の第1週までは会えない」と言われた。
キョウ君は大学とコーチを両立しつつ、僕との時間も取ってくれていたのだから我儘は言えないと思い、「勉強頑張って」と伝えた。
寂しい気持ちを押し殺していたことにキョウ君が気付いたかどうかは分からないけど。
「…2週間は長いな。まぁ、久々に会った方が燃える時間を過ごせるって言うし我慢しろよ」
「…そんな時を過ごしたことない癖に」
「何だとー!」
僕のボソッと呟いた言葉に咲夜が反応して、拳で頭をグリグリ…ではなく頬を摘まれる。
離して!とその手を叩いて離させる。
頬を摩りながらジトッ…と見ている僕に対して、ケラケラと笑う咲夜。
くそぉ…と思いながら、何だかんだ楽しくて笑みを浮かべた。
互いに笑っていると、咲夜がポンポンと僕の頭を撫でる。
「…きっと紫波さんも薺に会えなくて寂しく思ってると思うぞ」
「…そう、かな?」
そうだといいな、と心の中で思いつつ僕達は帰路に着いた…。
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