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【恋人にリンゴを】ワイン試飲会事件
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本編8ページの試飲会事件の詳細SS。
悟は、いつものようにレナードへ日本茶をいれていた。じっとりと見られている視線のせいでいたたまれないが、ここで逃げるわけにもいかない。何事もなく無事、日本茶がはいりレナードへ差し出すと、レナードはすぐさま匂いを楽しんで一口飲み干した。
その様子を見守っていた悟だが、レナードは溜め息をつくだけで。日本茶のことは必ず感想を聞けるものだから、そんなに気に入らないものを出してしまったのかと不安になる。
すると、レナードは椅子に深く腰掛けて悟を見た。
「ところでサトル。何か俺に謝ることはないか?」
「えっ……謝ること、ですか? もしかして、この日本茶はお気に召しませんでしたか?」
悟はドキッとする。視線を気にするあまり、どこかでうっかりいれ方を間違えてしまったのかもしれない。
だが、どうやらそれは違うようで、レナードは眉を寄せるだけだった。
「違う。何も思いつかないか?」
「申し訳ございません。私は一体何をしでかしたのでしょうか?」
「教えて欲しいか? なら、キスをしてくれたら教えてあげよう」
先程と打って変わってニヤニヤし始めるレナード。もしかして、レナードがスキンシップと言い張る一種の悪戯だろうか。
そう考えるとなんだか申し訳なさが消えていき、悟は冷めた目でレナードを見やる。
「……なぜ私がそのようなことをしなければならないのです?」
「なんだ、まったく反省の色が見えないな。キスは最悪冗談だとして、お前がミスをしているのは本当のことだ」
どうやら悪戯でもないらしい。ニヤニヤとした顔はまだ続いていて、なかなかはっきりとしないレナードに対して、だんだんと苛立ちというのが込み上げてくる。
悟は早くスッキリさせたくて、投げやりな気持ちになっていた。
「……申し訳ございません。お咎めはなんでも受けますので、お教えくださいませ」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに、レナードは悪く微笑んだ。
「言ったな? 教えよう、サトル。今回の出張の間、ずいぶん楽しいことがあったようだな」
「出張の間、楽しいこと……あっ!」
と思い出したところで、しまった、と悟は口元を隠した。恐る恐るレナードのほうに視線を向けると、にっこりと笑顔。ぞわっと背中に寒気が走るのを感じた。
レナードは椅子から立ち上がり、悟へ近づく。
「ほう、心当たりがあるのか。それほど楽しかったんだな。試飲会は許そう。だが、あれほどのワインボトルを空けるとはどういうことだ」
そう言いながら、悟を壁に追いやって顔の近くに手をつくと、悟は困ったように縮こまった。
これだけ近づけば、悟のつけている香水がふわりと香って。色気づくようなその匂いが、レナードは気に入らなかった。匂いの問題ではなく、香水をつけている悟が色っぽくて、さらに無自覚に振りまいているところだ。
それを何も知らない悟は、眉を下げて上目にレナードを見つめる。
「申し訳ございません、レナード様。私の監督ミスです。今後はそうならないよう……」
「それより明日の夜、ここに来い。反省はそこでしてもらう」
「かしこまりました……」
そうして、翌日の夜になった。
悟は大きく深呼吸をする。これは自分への罰。レナードが何を言ってくるのかわからないが、無理でない限りは受け入れなければならない。
意を決してレナードの部屋へ入ると、レナードはソファーに座ってワインを飲んでいた。試飲会の失態を思い起こすようで、悟は頭が痛くなる。
「レナード様、お待たせいたしました」
「いや、今開けたばかりだ。ほら、こっちに座れ」
指示されたのはレナードの隣だ。そして、ワイングラスも用意されて。
「え、私はちょっと……」
戸惑っていると、レナードが鼻で笑う。
「何を遠慮している。俺とは楽しめないと言うのか? 試飲会は楽しんだのだろう? あんなにワインボトルを空けて……」
「わ、わかりましたから……お付き合いさせていただきます」
そう言われてしまうと、何も言い返せない。
悟はしぶしぶレナードの隣に座った。だが、それさえもレナードは不服に思っているようで、眉間に皺が寄る。
「なぜそんなに離れる? 折角なんだからもっと近くに寄れ」
「これでも近いと思いますが……って、あの、レナード様?」
悟が言っている間に、レナードが動いてぴったりと身体がくっついた。むしろ肩を抱き寄せられて、これ以上ないほどに密着している。こうすると、レナードとの体格差というのが目に見えて悔しい。
勘弁してくれ、と心の中で叫んだ時、レナードに耳元で囁かれた。
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