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ハネムーン 5 (士郎side)
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その後、何度もイタズラな手が伸びてきて、結局は少しも休まる間がなかった。
フライト時間が3時間半と短いことに心底感謝しながら、金輪際、航空機で龍之介の隣の席には座るまいと、固く心に決めたのだった。
生まれて初めてだと緊張していた入国審査は、ひどくあっさりしたものだった。
頭の中でひたすらに聞かれそうな英文を呪文のように組み立てていただけに、ひどく拍子抜けしたが、両手の指紋を余さず取られたのにはヒヤリとした。
闇の組織の長がこんなところで身元をさらしていいものなのか……?
だが、心配は杞憂に終わった。
龍之介は自分とは違う列に並ぶと、パスポートの他に何やら追加の書類を提出したように見えた。
係員とフランクな英語で笑い合い、指紋を取られることなくすり抜けたのを見て、唖然とする。
「……何を出したんだ?」
「……企業秘密。ってのは冗談で、オレぁここじゃ、米軍お抱えの兵士扱いだ。それも将校クラスの特待でな」
「……っ」
いつからアメリカ国籍になったのだと唖然とすれば、リンの手回しによるものだと肩をすくめられた。
まったくもって、底が知れない。
考えてみれば、龍之介にはまともな戸籍すらないはずで
以前、本人がそう言っていた。
ならば当然すべては造られたもので、戸籍さえ思うままに操れるリンの底知れない財力に、震えを覚えた。
「オラ、ボケっとしてンな。……行くぞ」
何気ない風を装いながら、油断なく周囲を警戒する様に、完全には安泰でない裏事情を見たようで、ハッとした。
龍之介に続き足早に歩を進めた。
クックと龍之介が、喉の奥で笑う。
「……ンとに、オマエはウソがヘタだよなァ」
「……っ」
人が神経をすり減らしているというのに、笑うなど失礼にも程がある。
トランクを預けなかったお陰で、スムーズにゲートを通り抜けることができた。
とはいえ、
「おまえ、荷物はそれだけか?」
小型のボストンは見るからにペシャンコで、中にはせいぜい水着や下着が入っている程度だろう。
「……あン? これでも多い方だぜ? 旅の荷物なんざ、現地調達が基本だろ」
自分も荷物は最低限を用意したつもりだが、やはり初めての海外旅行で少し浮き立っていたのかもしれない。
空けてきたトランクの半分には、生徒会の面々や家族に買った土産を詰めるつもりでいたのだが。
ブルゾンを脱いだ龍之介のローカル顔負けに現地に馴染んだ様に比べ、自分がひどく観光客然としていることに、軽くショックを覚えた。
小型とはいえ、トランクなど持ってこなければよかったと。
荷物の身軽さは、不思議と旅の開放感につながる気がする。
囚われているものの少なさ、自由度。
ボストンを無造作に肩に掲げ、Tシャツ一枚で南国の日差しの中にたたずむ龍之介が眩しくて、軽く目を細めた。
「……ンな、見惚れてます、って顔してっと、食っちまうぞ?」
「……っ」
誰が見惚れたと拳を出せば、軽くいなすように手の平で受け止めた龍之介が、声を上げて笑う。
やはり、いつもと違う……?
あまり声を上げて笑うような男ではない。
まじまじと見つめれば、
「……ンだよ、ちったぁ浮かれたっていいだろ」
ふいっと視線をそらされた。
「オマエと初めての、……それも二人きりでの旅行だ」
言って、今度は正面から挑むように見つめられた。
「この先、半年分は抱かなきゃ気が済まねェ。……ゆったりビーチでくつろげるなんて思うなよ?」
眩い南国の日差しの中にありながら、龍之介の周りだけが明度を変えていくようだ。
深すぎる闇に引きずり込まれ、毒よりも甘い声に乱される。
「……っ」
息が苦しくて、狂おしいほどの愛しさに焼かれ、
「……望むところだ」
ようやく言い返した言葉が、かすかに震えていた。
「……汗かいてンな」
指先が伸びてきて、首筋を妖しくたどられた。
ビクッと震えが走り、あからさまな反応に、龍之介が喉の奥で笑う。
「……もうカラダが期待してやがる。そんなンでホテルまで待てンのかよ?」
「……っ」
腕を叩き落とし、睨みつけた。
「誰も期待などしていない! ……待てないのは、おまえだろう?」
「まァ、否定はしねェよ。……オマエの匂いだけで、ひどく昂ぶってやがる。飢えて渇いたケモノみてェにオマエの中に入ることばっか考えちまう」
濡れて低くなる声に、コクリと喉が鳴った。
「シチュエーションなんざ、どうだっていい。そこらの物陰にでも連れ込んで、ヤッちまうか……」
毒のように甘い声とと灼熱の視線に、犯されるかのようだ。
急速に体温が上がり、周囲の空気が薄くなった気がした。
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