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始動 7 (ゼロside)
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ドアが閉まった途端、龍之介の雰囲気が甘く溶けた。
妖艶としか言いようのない濡れた瞳で壁にもたれかかったまま、絡め取るようにこちらを見つめてくる。
「……どーした? 脱がせてくンねェの?」
毒のように甘い声。
ゾクリと脳の奥がしびれた。
強烈な吸引力、目には見えない磁場に引き寄せられ、思わず手が伸びかけて、笑った。
さすがはリンを骨抜きにしただけのことはある。
だが、場を支配するのはあくまで自分でなければ我慢がならない。
この男と自分は似ているようで、まるで違う。
この男がひどく攻めて堕とすのは、あくまで惚れ抜いた相手だけだ。
因果な性格だとは思うが、取り立てて問題だとも思わない。
片や自分は人として完全に壊れている。
自覚したのはまだ幼い頃だった。
どうにもならない破壊衝動に乾いて、乾いて、乾いて……。
取り繕うことばかりが上手くなった。
自分が壊れるか、周りを破壊し尽くすか。
ほとんど限界だった頃。
家訓に従い、家を出された。
誰に何をしても、すべては自分に返ってくるだけの冷たく凍った世間の水が、これほど性に合うとは思わなかった。
壊し壊され、傷つけ傷つけられて。
もはや堕ちることに何のためらいもなく、とりわけ不幸なガキをさらに不幸にすることに、無上の喜びを覚えた。
特に、アキラだ。
あの泥沼の中でも気高く硬質に煌めく魂を堕とすことに、とり憑かれたかのように夢中になった。
どれほど傷つけようが、芯の部分はけして揺るがない。
形ばかりへりくだって見せながら、瞳の奥に青い炎を揺らめかせ、静かに憎悪を咬み殺す姿に、震えるほどの快感を覚えた。
自分とは正反対のものに惹かれるのが人の常なのか。
手に入らなければ入らないほどにその価値は増し、我が生涯の獲物と見定めたアキラが……恋になどうつつを抜かしている暇はないと、弟のことばかりを考えていた、あのアキラが。
よりによって別の男に惚れた時には怒りを通り越して、もはや愉快ですらあった。
いったいどこまでハードルを上げれば済むのやら、まったくもって一筋縄ではいかないこのバトルのような恋路に、ますます夢中になる予感に震えた。
まずはお手並み拝見だと、笑いながら目の前の妖艶な男のアゴを取った。
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