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「楓……今までも今日みたいなことあったのか?」
先日、雅姫が言っていた言葉を思い出した。「楓はゲイにとっては獲物だ」と。
「んー……そういえば最近、同じようなことを言ってくる人はいたかも」
「で、どうしてた?」
「どう? んー……結局何が言いたいのか分からないまま終わってたなあ」
「それで…………あんなふうに触られたりしてたのか?」
「え? 触られて?」
「さっきみたいなことだ!」
違う……そうじゃない。こんなふうに叫びたいわけじゃない。また自分では抑えることが出来ず、大きな声を出してしまい拳が白くなるほど握りしめていた。楓も輝の聞いたこともない大きな声と鋭い目つきに怯えて、小さく体を震わせている。
「ごめん……大きな声出して……」
楓は思っていた以上にド天然だった。こんなことも分からないなんて……「もうお前はド天然を越えてただの馬鹿だ!」そう言ってやりたかった。
ーーああ……まただ……また調子が狂う。楓といると自分の知らない自分がどんどん出てくる。
「悪い……今日は先に帰って。用事を思い出したから俺は学校に戻る……」
きっと今、楓に向けた言葉と視線は酷く冷たいものだったと思う。悲しそうな顔をした楓を残して、その場をあとにした。
*
突然、残された楓は輝の背中をただ見つめるしかなく、その場に呆然と立ち尽くしていた。どうして怒られたのだろう、何をしたのだろう。考えても焦るばかりで状況が分からず目の前が真っ白になり、あまりのショックに過去のトラウマが思い出され体の震えが止まらなくなった。
ーー僕が悪いんだ……。僕が駄目な人間だから……皆んな離れていくんだ……。
輝に出会ってから楽しい日々ばかりだったのに、自分が不甲斐ないせいでその幸せを地獄に変えてしまった。輝が怒るなんて、あんなに冷たい表情をするなんて知らなかった。でもそれは全て自分がさせてしまったことだ。言い訳もできず後悔をしても遅く、楓はその場でぼろぼろと大粒の涙を流すことしかできなかった。
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