アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
切れた糸
-
この数日の出来事で疲れきってしまった楓は、今日はじめて「サークルに行きたくない」と駄々をこねた。それでも輝に会わなければこの先も楓は胸が痛む理由に気づけず終わる気がして、少し手荒ではあったが繭は引きずってでもサークルに連れて行く方を選んだ。
「こまゆちゃん……いつもより廊下が長すぎて、もう歩きたくない。行きたくないよ……」
「あー、もう! 登校拒否のちびっ子かっ!」
「ちっ……ちびっ子って言わないでよっ!」
「突っ込むとこはそこじゃないっ!」
あまりにもくだらない会話に二人は、顔を合わせて笑ってしまう。調理室へ着くと今日もドアの前にひとりの女の子が立っていて、頬を染めながら「輝を呼んで欲しい」とおきまりの言葉を言ってきた。それにまた楓の胸はちくりと痛み、体は「聞きたくない、見たくない」と拒絶する。
ーーあー、もう! 櫻木輝はどれだけモテるのよ! せっかく楓君のテンションを立て直せたのに、また一気に落ちたじゃん!
輝がモテるのは悪くはないはずなのに、怒りがおさまらなかった繭は大きな音を立てドアを開け叫んだ。
「輝君! 今日も『立候補者』がきましたよ! 早くふってしまえバカヤロウ!」
お姫様のように可愛らしい姿の繭から吐き出された言葉に輝や楓だけではなく、部員や告白をしにきた女の子も驚き口を開ける中、雅姫だけが腹を抱え繭を指差し最高だと大笑いをしていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
64 / 533