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☆俺の恋物語【3】フジヒラ
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「フジ、おはよう!」
「また、来たの?ヒラ」
「うん、昨日行くって言ったもん!ちゃんと来たんだよ!」
「ったく…来ても仕事終わるまでは遊べないぞ?」
「ふん!分かってるよーだ!フジにおはようと行ってらっしゃいを言うために来たの!」
「あ、ありがとう…」
おはようと行ってらっしゃいを言うためとか…新婚さんかよ…
か、可愛い…って、あー!だから俺は男に何でこんな事思ってんだって!
これは恋なんかじゃない、決して。でももし、もしだよ?万が一惚れてたら世間体的にまずいからちょっと距離置いてみようかな…
「気持ちは嬉しいけど、ヒラが毎日こんな朝早く来てたら辛いだろ?来なくても大丈夫だよ」
「辛くなんかないもん…フジ、もしかして俺って邪魔…かな?俺が毎朝来てたら迷惑…?だから来なくても大丈夫とか言うの?」
「いや、そんなわけじゃ…」
「分かったよ、もう来ない…じゃあね…」
ヒラは指を鳴らして瞬間移動で消えてしまった。
(世間体とか気にしてヒラの気持ち…全然考えて無かった…俺、最低かもな…)
こんな俺に友達だと言ってくれて、俺のことを気遣ってくれる良い奴なのに突き放してしまうような行動をとってしまったことを反省した。
(もし、次ヒラが来てくれたらきちんと謝ろう)
そう胸に決意し、仕事に向かった。
――――――――――――――――――――――――
「今日は少し早めに失礼します」
他の職員の人達がちらほらと見える中、いつも一番最後に出る俺はヒラが来てくれるんじゃないかと思いいつもより早めに出ることにした。
裏口のドアを開けて、辺りを見渡すがヒラらしき姿はどこにも無かった。
その後、数時間待ってみたがヒラは遂に現れなかった。
(やっぱり思った以上に傷つけちゃったのかもしれない…)
ヒラが喋る声が聞こえないとなんだか寂しくなった。
最近は誰かが居ないと寂しいなんて思いはしなくなっていたから心に隙間が出来たような感覚だ。
俺は後悔を胸に抱えて、とぼとぼと家に帰った。
次の日の朝、いつもは見ないのにたまたまその日はテレビを付けた。
ニュースがやっていたのでいつも出発する時間までぼーっと見ていたら、昨日他の地域で大きめの争いがあったらしい。その地域は離れていたので勢力はここまで及ばなかったから気づかなかったが、その争いは死者は出なかったものの負傷者は20人ほど出たようだ。
「いつも平和なのに珍しいなぁ…そういえば、ヒラって魔術師だったよな…」
もしかしたらその争いにヒラが行ってて、怪我をしてるんじゃないかと言う不安が頭を支配した。ヒラは大丈夫なのだろうか?俺はどうかその不安が当たりませんように、と祈った。
そうこうしているうちに家を出る時間になり、慌てて用意をして家を飛び出した。
――――――――――――――――――――――――
いつも通りの仕事を終えて、いつ通り誰よりも遅く残って居た。
いつも通り電気を消して、鍵を閉める。
裏口の戸を開けても、そこにヒラの姿は無かった。
数日前は誰かが居なくても何の疑問も無かった。いつも通りだった。
でも今日も昨日も寂しい。ヒラが居ないという事がいつも通りではなくなっていた。
(ああ、寂しいなぁ…)
ふと、上を見ると毛並みの綺麗な黒猫が塀の上をしなやかに歩いていた。
黒猫は縁起が悪いとか言われるけど俺はそうは思わない。むしろ好きだ。
その時、黒猫がにゃーんと声を出して塀の上から地面に飛び降りた。そのまま猫は路地を歩いて行った。その声になんだか呼ばれてる様な気がして、惹かれるままその猫について行くことにした。
「おーい、どこまで行くんだ?」
どこか行く所が決まってるという風に一向に後ろを振り向かない猫はいつも俺が通る帰宅路を歩いて行った。
そこで猫が不意に細い路地にするっと入っていった。急に角を曲がるものだから見失いそうになってしまった。
「あ、ここって…」
その細い路地はヒラと会ったあの路地だった。つい数日前のことなのに、懐かしくなって猫について行くがまま俺も路地に入った。
数メートルほど行くと猫が急にぴたっと立ち止まった。何だ?と思い視線を猫から正面に移すと、そこには黒い物体がもぞもぞと動いていた。
「ヒラ…?」
びくっと体を跳ねて恐る恐るこちらを振り向いた顔は紛れもなくヒラだった。ヒラはそこに居た数匹の猫達と戯れていて、前と同じ黒いパーカーのフードを被っていた。
「フジ…?何でここに…?」
「あ、その猫について行ったら…気付いたらここに…ってヒラ!怪我してるの?」
「あぁ、これ?ちょっとこけちゃって…俺ドジだからさ…」
へへっとバツが悪そうに作り笑いを浮かべるヒラの体にはところどころ包帯がしてあった。
「ヒラ、もしかして昨日の…?」
「あ…知ってたんだ。うん、昨日の争いに俺も行っててね、そこでちょっとミスっちゃったんだ」
「もう、大丈夫なの?」
「うん、ある程度は動かせるしそんなに痛みもないよ。心配してくれてありがとう」
「そうなんだ…それなら良かった…」
ヒラの怪我を見た時、心が痛くなった。もし、ミスをした原因が俺との会話だったら?そう考えると怖い。俺のせいでヒラを傷つけたも同然だ。自分が憎くなった。あの時の俺を1発殴ってやりたくもなった。
「あのさ、ヒラ…」
「うん?何…?」
ヒラは猫の体を撫でながらこっちを見ずに返事をした。
「昨日のこと、ごめん。俺ヒラの気持ち考えずに無神経なこと言った…ごめん…」
「んー…もう気にしてないよ、大丈夫」
大丈夫って言った割にはこっちを向いてくれない。
「なぁ、ヒラ。まだ怒ってるなら言って…?俺きちんと仲直りしたい」
ヒラに近付いて顔をぐいっとこちらに強制的に向ける。
少し強引かと思ったがきちんと目を見て話したかったんだ。
「びっくりしたぁ…本当に大丈夫だって…もう良いでしょ?離して…」
「でも、もしヒラが怪我をした理由が俺との喧嘩だったら?そう思うと俺…」
「大丈夫だってば…!フジとの喧嘩じゃないよ…ただ本当にミスしただけで…だから…」
「ねぇ、ヒラ…本当のこと言って…」
「やだ…」
「ヒラ…言って」
「っ…本当は…気にしてた…フジに嫌われてたらどうしようって…もう会いに行かない方がいいのかもって…それだけは聞こうと思ってその日の夜はフジの所に行こうとしたんだよ?でも急に命令が出て…それでモヤモヤしたまんまになって…考えてたら怪我…しちゃったの…」
「やっぱり、俺のせいだよな…ごめん、ヒラ…ごめん…」
「謝んないで、フジ…!俺気にしてないもん!仕事中に考え事してた俺が悪いしさ。それに、フジが迷惑ならもう来ないよ…?俺が居たら仕事の邪魔になるもんね…迷惑かけててごめん…」
「ヒラ、そんなことないよ。むしろヒラのお陰でいつも元気が出るし、この前星見に連れて行ってくれた時も凄い気分転換出来て楽しかった。ヒラには傍にいて欲しい…ヒラが良ければ、の話だけど…って、こんなの自分勝手すぎるよな…俺から突き放したようなもんなのに…」
「ううん!全然そんなことない!元気出るって言ってくれてありがとう。楽しいって言ってくれてありがとう。フジにはありがとうしか言えないよ。俺と仲良くしてくれて嬉しいし、自分勝手なんかじゃないよ。そりゃあ、ちょっとは考えちゃったかもしれない…でもフジに傍にいて欲しいって言ってもらえて今凄く幸せだよ…っ」
ヒラの目から涙が零れ始めた。
「ヒラ、泣かないで…ごめんね、泣かせるようなことして…俺やっぱ凄い最低だよな…」
「ううん、フジは最低なんかじゃないよ…!かっこよくて、優しくて良い人なんだよ!今のは嬉しすぎて勝手に涙が出ちゃっただけで…俺フジのことだけは大好き…なんだよ。本当に好きなの…」
ヒラがまだ泣き止まない声でそんな言葉を言う。
(あ、なんかもう…好きだなぁ…良い子だし、可愛いし…)
自分でも気付かないうちに、いつのまにかヒラのことが好きになっていた。
「…俺も好き…だよ」
もっと軽い感じで返そうと思ったが思いのほか真面目なトーンで言ってしまったため、告白の様になってしまった。でも、ヒラの大好きは俺の大好きとは違うかもしれない。そう思うと真面目なトーンで言ってしまったのを後悔したが軽く受け流されるのを期待した。
「本当に…?え…期待してもいいってこと…?」
「え、ヒラ俺のこと好き…なの?友達としてってことじゃ…なくって…?」
「さっき好きって言ったじゃん。俺…本当にフジのこと…好きだよ…/////友達としてじゃなくて…」
「あ…/////そうだったんだ…それなら…期待していいよ…てゆうか、むしろ…付き合う…?/////」
「うっ、あっ、うんっうんっ付き合う!喜んで!」
軽く飛び跳ねてぴょこぴょこしてるヒラを見ると愛しさが弾けそうだ。
「フジ、愛してるよ/////」
幸せそうな笑顔が愛してると何度も繰り返し弾む声で言う。そして最後、とても綺麗な涙を零し、愛してると言われた声があまりにも優しくて、その事が嬉しくて馬鹿みたいに頷いた。
「うん、俺も愛してるよ/////…でも傷痛くない?気を付けてね」
「うん、もう痛くないよ!心配してくれてありがとう。やっぱりフジは優しいね!」
「そんなことない、ヒラの方がよっぽど優しいよ」
傷を作った原因となる奴をこんなに早く許してくれるのも優しいし、好きって言ったら好きって言ってくれる所も優しい。
ねぇ、ヒラ。ヒラがもし何かの争いで死んじゃった時は俺も一緒に死なせてね。ずっとずっと大好きだよ、ヒラ。
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